13歳から始まる人材流出

 私の教えている学生の少なからぬ部分が月曜日に成人式を迎えました。

 もちろん去年、既に成人式に出てきたという学生もいて、中には新成人代表で挨拶をしたというような者もいましたから、今年もそんな感じなんだろうなあと思っていたら、さにあらず。

 半分近くの者が「成人式出ませんでした。中学から私学だったんで。」との報告。じゃあ何してたの?

「バイトしてました」
「高校の成人礼拝に出てました」

 そうだよなあ。私自身、中学から私学で成人式は出なかったしなあ。で、成人式に出たという者も

「ガラ悪かったです」
「ヤバいくらい民度低かった」
「知り合い一人しか居ませんでした」

なんて意見が色々。楽しかったという声も若干はありましたけどね。ただ、これはどうなんだろうと思いました。私が教えているのは、同世代では圧倒的に教科学力が高いクラスの若者たちで、将来は有能な人材として社会の中核、主戦力になっていくはずの層です。そうした人材の半分以上が中学入学の段階で地域社会から離れていってしまう。私も辿った道なんで文句を言えた立場じゃないし、私も小学校4年から6年を過ごした土地には何の愛着も無くて、そこの土地を相続しても売っちゃうだろうなと思うわけですがね。

 それでどうなるのか? 彼ら彼女らも小学校まで育った土地を離れてどこか別の自治体に定住し、おそらくはそこの街作りに加わっていくことになるでしょう。とすると、端的に言えば彼ら彼女らのような層がこれから来住して定住しようと思えるような町でないと、市民自治を支える良い人材がやって来ないってことですわね。妥協とか合意形成とか法制度とか財源捻出とか租税負担とか考えない左翼がかったラウド・マイノリティ、ゴタゴタの臭いを嗅ぎつけてどこからともなく集まってくる流れ者のプロ市民、疑似科学系環境運動にコロッとひっかかるニューエイジ系ロハスピープル・・・・・そういう人たちも一定数出現するのはしょうがないし、そういう人たちを粛正して強制収容所に送り込む社会は全然駄目なんですが、そういう人たちしか居ないってのは、それはそれで困るわけです。

 もう一つのポイントは、世田谷区とか杉並区とか渋谷区とか中野区とか新宿区とか豊島区とか港区とかの、人材としてポテンシャルが高い層が引っ越してきてくれるような自治体にしたところで、地元小学校中学校で同じカマのメシを食ったコミュニティとは無関係の、地域から孤立した状態でそれらの人材は来住するわけですから、それらの人材を上手に地域社会に融合させていく工夫はいずれにしても必要ってことですね。

 ちなみに私は、こうした人材の流動化もあながち悪い話ではないと考えています。裏を返せば人材獲得のチャンスが広がっているということでもありますから。魅力的な街作りをして、「きたりもん」が地域で力を発揮出来る仕組みを整えていけば、本来その町だけで育てられるよりも多い数の、有能な市民を獲得出来るでしょう。ローカルの人間関係がガチガチに固まっていて風通しもなにもあったもんじゃない町よりは、色々な土地で生まれ育った人材が集まってきて面白いことをやれる町の方が、絶対に活力が大きいはず。例えば私の高校の同期で水戸市役所の沼田誠くんは、今では水戸の街作りの行政サイドのキーマンになってますからね。

 我が稲城も、13歳からの人材流出という状況をチャンスとして掴まえられる自治体であって欲しいものです。