今日は今年度最後の講義でした。1年ゼミも2年ゼミも今日でおしまい。
2年ゼミは10ヶ月かけて作ってきたそれぞれの個人の作品の展示即売会です。必ず現金即決価格を付けてくることになっていて、その値段で誰にでも売らなければいけないとそういうルール。
さて作品の方ですが、これが本当に力作揃いでした。私は「追浜」「TOKYO NEWCOLOR」と題された二つの作品を購入。他にも欲しい作品はあったんですが、既に買い手が付いていたり、他の学生に買われたりで、手に入らなかった。値段が高すぎて即決出来ないのもあったし。50000円とか。1億円とか付けた奴もいた。
特に私が気に入ったのが「追浜」です。5000円でしたが、殆ど迷うことなくお買い上げ。これを作った学生はその通り追浜で生まれ育っていて、自分の家の周りの写真で写真集を作りました。最初は「神奈川県内の綺麗な風景を集めた作品にしたい」と言っていたんですが、そんな写真ならカメ爺がいくらでも撮っていて、しかも工夫の余地があんまりないぞと一旦その企画を私が突っ返したんですよ。
そこから、「じゃあ何撮ったら良いんでしょう?」「地元の風景なんかどう?」「え? そんなの全然面白く無いですよ?」「わかってないなあ。絶対面白くなるからやってみろって!」というようなやり取りがあって、半信半疑ながら地元の風景を撮り始めた。
それで上がってきた写真を見たら、まあ最初はピンボケも多かったし構図もいまいちだったしで良いカットは少なかったですが、何か予感のようなものがありました。もしかしたらこれはいけるかもしれない。そこで「良いぞこの線でガンガン撮れ」と指示を出したら、翌月にはググッと面白いものを撮ってきた。
本人はまだ半信半疑でしたけどね。でも私には、追浜という街の空気感とか成り立ちとかがグイグイ伝わってくる。だから、どの写真のどこが面白いのか、何故面白いのかを丁寧に説明して、このコンセプトでまとめるように言いました。
そして今日。出来上がった作品を見て、自分の見立ては間違ってなかったことを知りました。追浜という郊外住宅地で平成になってから生まれた女の子が、初めて客観的に自分の街にカメラを通して向き合って、自分の街の魅力とは何なのかを考えて、その魅力を伝えようとして写真を撮り溜めて作った手作りの写真集。どのページを開いても、その子の人間性と生まれ故郷への愛着が伝わってきます。郊外を写真に撮るというとホンマタカシ風のクールな描写が定番ですが、私は断言しますけど、「追浜」は「東京郊外」を乗り越えましたね。郷土愛と素直さで。こんなに心暖まる郊外写真集は他に私知らないもん。切なくなってくるくらいに暖かい。
5000円は安かった。