2015卒論ゼミの初回講義が終わりました。

 
今日は34限と卒論ゼミでした。
 
初回だったので3限では大学の講義で書かされる一般的なレポートや、行政機関や企業が作成する報告書と学術論文の違いを説明するところから。
イメージ 1

 
新しいデータに基づいた論考であるか、あるいは新しい発想を用いて従来のデータを解釈しなおす論考でなければならない。生データを整理して秩序ある情報に変換するだけではなく、その情報に何らかの意味を与えなければならない。つまり新しい知見を正しいやり方で生み出さなければならない。
 
そしてもう一つ、研究の成果は人類共通の知的財産として誰でも利用出来る状態に置かなければならない。
 
「え、そんな壮大な話だったんですか?」
「実はそうなんだ。昔えらい人(ニュートン)が、自分がやっているのは巨人の肩に乗って遠くを見るということだと言ったんだが、巨人というのは人類がそれまでに積み重ねてきた知的資産のたとえだ。君も同じように、巨人の肩に乗ってこれまで誰も見た者が居ないものを見ることになるわけだが、そうして目にしたものを人類全体の財産とすることで、巨人は更に大きくなっていく。」
「なるほど・・・」
「だから、学術研究目的の場合、様々な資料へのアクセスのハードルが低い。ビジネス目的より格段に低い。それは、そうして得られたものが人類共通の財産になるという建前があるからだ。」
 
次に、学術論文の正しい書き方コーナーに進みます。事実と論理に基づき、主観は交えずに書くこと。事実とは公知の事実、2次資料に書かれている内容、そして正しい手続きで自分が手に入れた生データ・・・
 
STAP細胞のあれは正しく無かったということですね」
「その通り」
「よくSNSで回ってくるウェブ拡散アンケートも正しくないと」
「その理由は?」
「誰が答えているかわからないからですか?」
「その通り」
 
優秀なんで一を聞いて十を知るみたいなリズム感で話が進みます。
 
「検証可能性を満たしているのも大事だ。これは、誰でもその論文に書かれた内容が事実かどうか検証出来るということだ。」
STAP細胞のあれは?」
「実験のやり方が一応書かれていたので、全世界で追試が行われて、お前これ再現性が無いじゃねーかということがわかった。」
「社会調査の場合はどうするんですか?」
「いつ、どこで、誰に、どのような方法での調査を実施したか明示する。アンケートをやったなら調査票を付録として添付する。それと、事物の名称は必ず正式名称を示す。羽田空港ではなく東京国際空港だ。アーネスト・サトウを知っているか?」
「変な名前ですね。」
「うるさい。日本にはアーネスト・サトウという有名人が二人居た。一人は明治時代の外交官、もう一人は昭和時代の写真家だ。アーネスト・サトウと書くだけではどっちかわからんだろ。」
「どうするんですか?」
「初出時には本名をカタカナ転写と原語表記で書いて生没年を示す。」
 
幸いなことに、IMRAD形式とか出典注の書式については留学先の大学で叩きこまれたとかで、ちょっと話したら思い出してくれました。日本人の先生に習うのは今日が最初ってマジかよおい。
 
段落分けの考え方、短く簡潔な文体の重要性、余計な知識自慢はせず、賢い人なら予備知識が無くても一読して理解出来る文章にすることの意味などを説明して3限が終了。
 
普通はこれだけで2コマ使うんですけどね。拙ゼミのトップクラスはこの速度でちゃんとついて来れるのです。
 
ハーゲンダッツと紅茶で休憩して、4限はテーマの絞込についてのブレストです。マオリ+観光+SNSという三つのキーワードを持ってきたので、これらの組み合わせでどんな研究テーマが成立するかを考えさせました。最初に「SNSの特徴はなんだと思う?」と質問して出てきたのが、SNSではなくインターネット一般の特徴だったので、全ボツ。
 
大きな紙を渡して、
 
「自分が観光旅行に行くと想定して、家を出てから目的地についてどんな行動をして、どうやって帰って来るかを、時系列順で書き出してみろ。」
 
と指示。
しばらく考えていましたが、やがて
 
「あ~、なるほど! 現地で観光客自身が情報発信するんだ!」
 
ということに気づきました。そうなればしめたもので、デジタルカメラ内蔵スマートデバイスとフリーwifiSNSが組み合わさった時、情報がどのように生成されてどのように回るかが図式化出来ます。更に、SNSでバズるコンテンツの特徴は何かとか、SNSごとの好まれるコンテンツの違い、ホストやゲストや代理店や口コミメディアがそれぞれSNSコンテンツにどう関わってくるかなど、活発なディスカッションを展開させながら、可能な研究テーマの枝葉を広げてやりました。
 
最後に、先行研究の探索のやり方をアドバイスして4限が終わり。息子が帰って来たので、2年ぶりに久闊を叙して帰って行きました。
 
調査フィールドはおそらくロトルア、書き上げた論文は卒論としては審査してもらえないので、どこかの雑誌に投稿するという方向で進めて行きます。