佐藤郁哉『社会調査の考え方(上・下)』を読んでいる

今日はほぼオフのつもりで、佐藤郁哉『社会調査の考え方(上・下)』(東大出版会2015)を読んでました。

私自身、佐藤氏の著作群をベースに試行錯誤して社会調査を勉強してきたので、『フィールドワーク―書を持って街へ出よう』(新曜社2006)以来10年ぶりになるこの新しい教科書も、流し読みでもだいたい頭に入ってきました。

中でもそうだよなと思ったのは、社会調査における仮説の意味や位置づけの再検討をしている章です。実はA先生のゼミにいた卒論難民たちが当時口を揃えて、A先生は仮説検証型の卒論計画しか教えてくれないとボヤいてたんです。つまり、whyを発見する(因果関係か相関関係の発見)タイプの卒論。しかしwhatを発見する事実発見型の論文もあるので、テーマによってはそちらの書き方のがスムーズなんですよ。

これについては佐藤氏も、仮説検証型にこだわりすぎると、何らかの事実関係を想定してリサーチデザインをする研究が出来なくなるとあっさり弊害を指摘していて、我が意を得たりでした。

これから卒論に取り掛かる3年生や2年生には、この本は勉強の土台としては凄く良いですね。大部だし独学だけでここに書いてあることを理解するのは、平易な文章ですが一筋縄では行かないとも思いますので、良き先生や先輩の助力を得ながらということになるでしょうが。

私は、一章ごとに「自分の教え方はあれで充分だったかな」「ここはもっと上手く指導出来たかもしれないな」と振り返りながらの読書になっています。最後の論文指導の良い燃料になります。

大学の先生という仕事は、本来ならとても面白くやりがいがあるものなんですよねえ・・・・でも岡山大や新潟大の有り様を見ていると、職場としては


「無いわ~」
です。
縁があった一握りの優秀な学生だけ、私塾で教えるのが限度だな。