道場開設のすすめ

 20年くらい前から延々とループ状態で続けられてきた、日本手話と手話音楽を巡る論争が、つい最近またTwitterで繰り広げられていたようです。

 コトの発端は、NHKの「みんなの手話」で、割と古いタイプの手話歌詞の付いた手話歌が放送されて、それが聞こえる人たちの間で割と人気になった一件。例によって木村晴美氏がこれに噛みついて、あとはもういつもの議論が一通り。「日本語対応手話は手話じゃないから手指日本語と呼べ」とか「ろう者を抑圧していることに気づいていないイタい聴者どもめ」とか「日本語対応手話で何が悪い」とか、悲しいくらいに20年前と同じです。

 中でちょっとだけ目を引いたのは、「みんなの手話」の他に日本手話に特化した番組を作った方が良いんじゃないの、という意見ですね。日本手話大好きな方々の日本語対応手話への憎悪はもうどうしようもないところまで達しているので、「みんなの手話」という番組の中に曖昧なまま両者を入れておけば、また何度でもこういう不毛な論争が再燃するでしょう。

 私のお薦めはですね、日本手話学会が組織改編して「財団法人日本手話道連盟」になるってアイデアです。この議論を眺めていても感じるんですが、日本手話を愛する知識人の方々の思いは、もはや「手話道」とでも呼ぶべきレベルに止揚されています。道です。これは既に語学とか通訳技術なんて軽いもんじゃない。人生を賭け、己の全存在を賭して邁進すべき道です。その深奥を極められるのは、自己を厳しく律し、道を求めて心身を鍛練し続ける者だけです。道を極めると書いて極道と・・・あ、間違えた。すんません。

 気を取り直してもう一度。

 さて、道を教える場と書いて道場と呼ぶ。テレビ番組で道を教えようというのが根本的に間違っています。道を学ぶとは、そんなチャラけたものではありません。神聖なる道場の中で、師範や師範代の方々に教えを請うのが、正しい日本手話学習のあり方かと思います。もちろん音響の付いた手話歌なんかに関わった者は即破門で回状が回ります。

 どすか? 森さん。良いアイデアだと思うけどな。

(蛇足ですが、私の知る限り、今現在ポピュラーカルチャーとしての手話音楽の実践に取り組んでいる若者たち(無論、ろう者も含まれます)の多分100%が、こういう議論や意見を全く相手にしていないと思います。この20年ループの存在すら知らないんじゃないかな。というか、ポピュラーカルチャーを統制しようなんて土台無理な話なんだよね~)