木村伊兵衛写真賞35年周年記念展

 川崎市民ミュージアムで開催中の「木村伊兵衛写真賞35年周年記念展」を見てきました。ここに行ったのは何と19年ぶりで、前回も実は写真展。第5回木村伊兵衛賞を受賞した岩合光昭さんの個展を、当時つきあっていた女性と見に行ったんですよねえ。なんか奇遇だなあ。

 それはともかく木村伊兵衛賞の受賞作が、第1回から去年の高木こずえまで少なくとも一人1点は展示してあったのですが、なかなか楽しめましたね。日本という、かなり閉鎖的で孤立している一方で写真家の頭数はとんでもなく多く、最近流行りの言い方をするならガラパゴス的な発展をしてきたシーンの流れみたいなものが感じられる展覧会でした。

 個人的にほほう、とか、これは、と思ったのは以下の方々。

柴田敏雄「日本典型」(1991)

 1メートル四方はあろうかという巨大なモノクロプリントによるコンクリート造型の描写は大迫力でした。サイズの勝利的な側面もありますが。

★★★☆

小林のりお「FIRST LIGHT」(1992)

 多摩ニュータウン開発風景を大判リバーサルで撮った作品+奥多摩周遊道路の建設風景を大判モノクロで撮った作品。解説には「都市文明への警鐘」なんてあったし、実際当時にはそういう文脈で評価された作品ですけれども、私には単純に多摩ニュータウン開発の写真が美しく見えました。廃墟の美でも人工美でもない、切り土・盛り土工事の美ってありますね確実に。

★★★☆

瀬戸正人「Silent Mode」「Living Room Tokyo」(1995)

 前者は要は電車内の隠し撮りポートレートでして、現代ではもう絶対やれないコンセプトですが、たしかに作品としては非常に面白いです。後者は色々な貧乏人の安アパートの室内+居住者のポートレート。プリントの質も素晴らしいのですが、コンセプトも秀逸だし個々の写真のコンポジションも素晴らしい。良いもの見ました。

★★★★☆

畠山直哉「LIME WORKS」(1996)

 これは凄い。「おお~!」という感嘆の声を思わず漏らしてしまいました。あのサイズのプリントで見るとまた格別というか。オリジナルプリント欲しくなった。工場をここまで美しく表象出来るものなのか。参りました。

★★★★★

都築響一「ROADSIDE JAPAN」(1997)

 笑いの瞬発力は梅佳代を超えていると思います。

★★★

ホンマタカシ「TOKYO SUBURBIA 東京郊外」(1998)

 これもニュータウン批判という文脈で評価された写真集ですが、男の子のポートレート1枚がでっかく引き延ばされて展示されてました。同じニュータウンで撮っても私が撮る子供たちとは全然表情が違う(そういう表情を選んでいるのでしょう)ので、こういう写真でばかりニュータウンを表象されるのはかなりムカつきますが。それと、後ボケがとろけるように綺麗だったんで、85ミリとか135ミリの良い単焦点で撮ったのかなあとか。
 
★★

中野正貴「東京窓景」(2004)

 アイデアよし、技術よしで、お見事天晴れというしかない。素晴らしい作品。

★★★★

オノデラユキ「camera himera カメラキメラ」(2002)

 アイデアも良いし、プリントが非常に綺麗でした。悪くないです。

★★★

梅佳代「うめめ」(2006)

 既にやりつくしたというか、この先この人はどこへ行くんだろう、どっか行けるんだろうかと余計な心配をしてしまうのですが、取り敢えず面白かった。昔『宝島』という雑誌でやっていた笑える投稿写真コーナー(VOWとかいったような)を思い出します。

★★

高木こずえ「GROUND」(2009)

 ご本人の公式ウェブサイトのちんまい画像では本当に何が写ってるのか全然わからなかったのですが(富山の郷土料理の「煮こごり」を撮ったのかと本気で思っていた)、巨大サイズで展示してくれていたので、ようやく何だかわかりました。フォトショの力は偉大なり。でも、この次どこ行くんだろうとも思いました。次回作で真の地力が問われるでしょうね。「MID」はつまらなかった。

★★