雨の大井町

 先週末から、関東がまるで「やませ」の吹き込んだ三陸地方のような妙な寒さにつつまれているので、海に行くのは中止して大井町で拓海さんと飲んで来ました。例によって非常に面白い話が沢山聞けたのですが、すいません、ここには書けません・・・。

 さて、昨日は私の友人を一人、連れて行ったんです。最近ちょっと会社がつまらんなあ・・・ということで、何となく「転職も良いか」と考えているそうで、だったら転職の達人の拓海さんに相談してみればとなったんです。

 それで、改めて私も彼の胸の内を色々と聞いたんですが、要するに「人生が仕事一色になってしまっているのに、その仕事が親会社の意向もあってやりたいようにやれない」と。そこに鬱屈したものを感じているようでした。その彼が帰り際に、「バンドやっていた時は(仕事以外に面白いことがあったんだけど)なあ・・・」と呟いたのが印象的でしたね。

 いや、世の中なかなか上手くいかないもんですよね。私は仕事以外の面白いこと(子育てとか論文書きとか)しか今はやる時間が無いので、ちょっとバランスが悪いなあと思ってる。私の仕事はやるとなったらまとまった時間が必要ですからね。細切れにしか時間が作れない今の状況では、責任を持って仕事を受けることが出来ない。だから休業中。拓海さんは、「(子育てが)一番大事なことだから、それで良いんだよ。」とおっしゃってましたけど。

 一方、彼はその逆です。ちょっと新鮮な空気を吸った方が良さそうなんだけど、なかなかそういった機会が得られない。他にも同期では鬱病になって仕事辞めて自宅療養中の奴もいるし、就職氷河期第一世代はなかなか大変な30代を過ごしています。ただ、彼らも曲がりなりにも大学出て14年間働いてきたわけで、それなりのスキルや経験は持っているんですよ。まさに働き盛りの年代ですからね。

 私はふと思いました。こういった、一線でバリバリ働いている連中のスキルを、NPO活動のようなところにパートタイムで持ち込めるようなシステムは無いのだろうか、と。NPOが行う業務の中には、ビジネススキルが活用出来るものが無数にありますからね。彼は物流のシステム構築が専門なのですが、NPOの中にもロジスティックス部門を持つものはいくらでもあります。だいたいポリネシア航海協会だって、航海カヌーと伴走船を送り出したら要所要所で補給をしていかなければならないでしょう。去年の日本航海でもちゃんとロジスティックスの担当者が居ましたよね。

 他にも、例えばフェアトレード系のNPOならば、商品の産地から日本国内の倉庫まで、更にそこから消費者の手元にまでモノを動かさなければならない。そうしたシステムづくりに彼のような物流のプロのスキルを持ち込む、具体的には案件単位でのボランティアとか有償ボランティアのような形になると思いますけれども、そういうシステムがあれば、彼の鬱屈したものを発散させてやれるんじゃないか。

 彼自身、やはり誰かの役に立てているという実感が仕事に向かう原動力だと言っていましたから、それならいっそそういう実感は別の場所で味わって、仕事は金稼ぎの場と割り切るのでも良いんじゃないかと思ったわけです。

 ただ、家に帰ってネットで調べてみると、今現在、日本国内にはそういったシステムは無いようなんですね。NPOにボランティア人材を紹介するとか、NPOの求人情報を探せるサイトはありますよ、たしかに。でも、そういったところで出ているのは、運転だとか草むしりだとか・・・要するにアルバイト情報誌なら「軽作業」と書かれているようなもの。誰でも出来るような、高度なスキルを必要としないものばかりなんです。

 でも、そんな・・・・ねえ? それって単純作業に関わる人件費の節約でしかないでしょう。敢えて書いちゃいますけど、それでは高度なビジネススキルを持っている人は呼べないです。だから、高度なビジネススキルがNPO活動に利用出来ない。もちろん、あるNPOが何らかのフィールドに継続的に関わっていくことによって、現場のメンバーの間には、「現場の知識」が蓄積されていきますよ。それは確かにNPOの強みになる。でも、既にプロの技術や知識が存在している分野が活動内容の中にあるのなら、素人が無理矢理それをこなそうとするより、志のあるプロのボランティアを探した方が良い。

 日本のNPO、今ひとつその辺の発想が足りないんじゃないか。そんな気がします。