工夫無し

 秋葉原で恐ろしいテロが発生しました。たまたま、犯人と苗字が同じですもので、テレビのニュースショーを見ていると何か自分が犯人だったような気分になります。

 それにしても。。。ニュースショーの演出は相変わらず紋切り型ですね。

「それでは加藤容疑者はどのような子供時代をすごしたのでしょうか」
「気に入らないことがあると突然キレて怒り出すことがあった」
「中学校の卒業文集にはアニメ絵を」

 はいはい。要するに「子供のころから突然キレるタイプで、アニヲタの気配があった」という人物像を描きたいわけですね。事件の舞台がアキバだったから、こういうアングルにすれば非常にわかりやすいですもんね。

 でも思いませんか。誰だって気に入らないことがあったらキレそうになるし、たまにはキレることもある。そしてジャパニメーションがこれだけ世界的に受け入れられている中で、アニメ風の絵の1枚や2枚、誰だって描こうとしてみるもんです。ねえ。スーパーの子供向け商品なんかドラゴンボールにポケモンに・・・・そういう文化の中に浸して子供を育てざるを得ない国にしておいて、いまさら何を。

 一番気色悪いなと思うのは、こうやってマスメディアは断片的な情報をもとにステロタイプなプロファイリングを開陳しながら、「第2、第3の加藤容疑者になりそうな奴」は「突然キレるアニヲタ」だと示唆しつつ、自分たちがそういうことをしているという自覚を持っていないこと。

 そんなプロファイリング、何の建設的意味も無いですよ。

 おそらく、どんな人間だってひとつふたつみっつくらい間違えば、加藤容疑者みたいな凶行に至ってしまうんだと思います。誰でもモンスター化する可能性はある。あなたにもわたしにも。大事なのは、人をモンスター化させない社会を作るってことであって、次にモンスター化しそうな奴を探して予め排除することじゃないんです。

 気になるのはね、加藤容疑者の職場ですよ。偽装請負で悪名高い日研総業でしょ。日勤夜勤ありの不規則なシフトで自動車の塗装をやって、時給1300円の月収20万、しかも簡単にクビにできる派遣でしょ。直前に200人中150人がお払い箱にされてるんでしょ。

 これっておそろしくストレスフルな生活だと思うんですよ。そら、キレそうになるわ。私だってその手の職場に居たことありますけど(はっきり書いておきますがビックカメラです)、みんなキレる寸前で働いてましたもん。ビック社員の家に火炎瓶投げてやるつもりで、社員の家の前まで行ったって同僚も居ましたよ。

 私はねえ、本来、加藤容疑者が働いていたような職場なんて日本に存在しちゃいけない類の職場だと思うんです。だって将来の夢とか希望とか、まったく描けないじゃないですか。そんな職場を野放しにしていれば、きっとまた次の加藤容疑者が出現しますよ。アニメ絵を描いたことが無い奴が。必ずね。彼の仕事は最低でも年収400万以上は払うべきだと思います。

 ちなみに関東自動車ってトヨタの大手下請けっすよ。ただでさえ馬鹿みたいに安い車をさらにディーラーで値切りに値切って買う人が減れば、きっとモンスターの出現率は下がるはずですやね。