ゆとり教育世代の恐るべき実態

 先日、文部科学大臣が「ゆとり世代」を擁護する発言をしたそうです。「ゆとり世代」というのは、最近ではインターネット上で他人を罵倒する為の言葉になっているそうですが、その実態たるや驚くべきものです。

 以下に、私が担当した学生たちの有様を紹介しましょう。

 彼らは今年19歳ですから、まさに「ゆとり教育世代」。

 彼らは私が担当した13回の講義で4本のエッセイ・論文、6冊の新書・単行本をテキストとして通読し、毎回その内容を要約したレポートを提出しました。最初の頃のレポートの質たるや悲惨なものでしたが、半年の間に彼らの書くレポートの質はぐんぐん向上し、終わり近くの数回など、殆ど文句の付けようのないレポートをコンスタントに書けるようになった学生さえ居る始末でした。

 また彼らは「里山」「フェアトレード」「サプライチェーン」などの言葉は知らなかったものの「CSR(企業の社会的責任)」は知っている者もおりましたし、概して知的好奇心は旺盛で、講師に講義時間外の学外での講義を2回も(無給で)強要し、さらには学外講義の舞台となった里山や商店街についての感想・分析レポートを自主的に書いて提出する学生まで複数名出る有様。中でも某駅前商店街再開発についての分析など、講師でさえ思わずうなってしまう斬新なアイデアが提示されておりました。

 レポートでは毎回、「このテキストの主張の妥当性を5段階で評価し、その理由も述べよ」という項目についても書かせましたが、彼らは皆、テキストの内容を鵜呑みにすることなく、評価出来る点と弱い点を感じ取っており、良い内容のテキストでも「ここは弱いと思います」という指摘を曲がりなりにも出来るようになっていきました。

 まったく、呆れたものです。これが「ゆとり世代」です。同じ大学で17年前に学んだ人間の実感から言って、彼らは知識の編成形態が多少異なっている程度で、知的活力や潜在的な能力に明確な差はないと思います。鍛えればそれに応えられるだけの地力もちゃんとあります。

 いかにマスコミの報道が当てにならないかということですね。いや、統計的に無意味な数字を針小棒大に論って「ゆとり世代」をこき下ろす日本のマスコミ(の社員ライター)こそどうかと思いました。

 ちなみに最も優秀な学生の一人は瀬戸内でホクレアを迎えた某県立高校の卒業生で、ホクレア受け入れに奔走された先生の教え子でした。