5巻の中盤以降、隊長はひたすらローンバトルを続けます。ランボーみたいなものです(本当)。その孤独な戦いの間、隊長が戦闘や行軍の合間に喉を潤すのは、ご存じワイン。
私も自転車で走っている時はこまめにスポーツドリンクを飲んで水分補給しますけれども、隊長はスポーツドリンクの代わりにワインなんですね。
しかしですよ。仮にも戦闘行動中なんですから、ワインなんかガブ飲みして大丈夫なんでしょうか? いくら酒豪でも、喉を鳴らしてそんなもの飲んでいたらヤバいんちゃうか? 私の場合、1時間の有酸素運動で500mlから750mlの水分補給を行います。今回のマドリードはひたすら雨の中ですけれども、それでも1時間で350mlくらいは欲しい、というかそれくらいは補給しないと体力が持ちません。
ということは、2時間の戦闘行動でボトル1本。それはいくらなんでも無茶だ。「あぶさん」じゃあるまいし。大体、今私たちが有り難がっているようなフルボディの重厚なワインなんか、渋すぎてゴクゴク飲めないでしょう。もしかすると、現在のワインの味の基準というのはワインが運動時の水分補給に用いられなくなってから出来たものなんじゃないですかね? ボルドーで格付けが出来たのが1855年ですけれども、19世紀半ばのヨーロッパの陸軍の行動食にワインは含まれていたんでしょうか?
どうもおかしいなと思って少し調べてみたんですが、やはりというか、ワインを水分補給に使っていた時代は、基本的にワインというのは樽に入っているものだったそうです。瓶に入れてコルクで栓をしてというのは、ワインが作れない北ヨーロッパに輸出するようになった近世以降。ちょうど隊長の時代にそういう貿易も始まっていたわけです。だから瓶に入れて熟成させて飲むというワインの飲み方も近世以降だし、そもそも南ヨーロッパでは瓶になど入れなかった。樽から壺に移して供したんですね。
しかも、5倍くらい、あるいはそれ以上に水で薄めて飲むのが当たり前だったのだそうです。5倍ならアルコール度数も2度とか3度くらいになっちゃいますから、ビールより度数が低いんですね。6倍なら2度前後。だったらまあ、運動中の水分補給にも使えなくもないか。
余談ではありますが、私が運動中に飲むスポーツドリンク、市販の状態の、やはり5倍くらいに薄めてあります。銘柄にもよりますけど、ポカリスエットとかアクエリアスなんかは市販の状態だと糖度が高すぎて、水分吸収の速度が遅くなっちゃうんですよ。