ブレダの難儀さ

 4巻が全部終わったんで、城砦建築に関する概説書などをのんびりと読んでおります。それで改めて判ったのですが、3巻の舞台となったブレダの町というのは、単なる城壁で囲まれた都市というものではない、かなり特殊な町だったんですね。

 つまりですよ。たしかにヨーロッパには中世以降、城壁で囲まれた都市は沢山ありました。3巻冒頭でカルタヘナ連隊が落としたアウドゥケルク市もその口でしょう。石積みの城壁。城門。場合によっては水濠。

 しかし、こうした造りの城というのは、大砲が発達するとあまり役に立たなくなる。石積みの城壁は砲弾が当たれば壊れちゃいますし、高い塔も大砲の良い的になるだけです。

 そこで15世紀以降、フランスを中心にして発達してきたのが砲戦に対応した複雑怪奇な城でした。この画像見てください。16世紀前半、だからブレダの戦いの100年前のブレダの地図。

 城壁の各所には矢戦ではなく砲戦・銃撃戦を前提とした角張った稜堡が築かれています。これは死角をなるべく減らす為の形状だそうです。城壁そのものも石積みではなくて土塁。その方が砲弾の破壊エネルギーを吸収出来るのでこの時代には有利だったんですね。

 それから本来の城壁の突端の部分には、独立した堡塁が建設されてますね。5つあるかな。これが半月堡です。カルタヘナ連隊の正面にあった「墓場」の半月堡がどれかはわからんとですが。

 いかがですか。我らがドン・アンブロシオ将軍率いるカトリック軍は、この剣呑な要塞都市の周囲に塹壕を掘り巡らしてはモグラ戦を展開したというわけです。ご苦労さまです。