国道471号

 藤崎達也さんが関わっている「シーニック・バイウェイ北海道」の活動が国土交通省さまの目に止まり、全国にこのコンセプトを展開することになったそうです。「日本風景街道(シーニック・バイウェイ・ジャパン)」というそうな。
http://www.hido.or.jp/fukeikaidou/

 それにしても「シーニック・バイウェイ」とは何なのか? 北海道のサイトも国土交通省のサイトも、「シーニック・バイウェイ」の定義を明確には示していませんが、要するに、ある地点からある地点を結ぶ道とその周辺の空間全体を観光資源と捉えて、整備していこうということ、のようです。

 このコンセプトの元祖はアメリカ合衆国のようですね。

The National Scenic Byways Program is part of the U.S. Department of Transportation, Federal Highway Administration. The program is a grass-roots collaborative effort established to help recognize, preserve and enhance selected roads throughout the United States. Since 1992, the National Scenic Byways Program has provided funding for almost 1500 state and nationally designated byway projects in 48 states. The U.S. Secretary of Transportation recognizes certain roads as All-American Roads or National Scenic Byways based on one or more archeological, cultural, historic, natural, recreational and scenic qualities.

「ナショナル・シーニック・バイウェイ・プログラムは U.S. Department of Transportation, Federal Highway Administrationに属する一部門です。このプログラムは国内の特定の道路の認知度を高め、それを保全し、また振興していくものです。1992年以来、このプログラムは48州の1500件近い倍ウェイ・プロジェクトを支援してきました。考古学、文化、歴史、自然、娯楽、風景といった側面から、全米を代表する道として選ばれた道が、運輸省長官によってナショナル・シーニック・バイウェイに認定されるのです。」

 洗濯しながらざっと訳したんで適当です。すまん。

 まあ、なんとなくこれで内容がわかりますね。

 それで、どんな道が候補として選ばれたのか?

 Pdfなんで重いですが、これが発表資料。
http://www.hido.or.jp/fukeikaidou/img/siryou/wg/no1/s2_2.pdf

 なんかネーミングのセンスが・・・血の気が引くほどプアですが・・・・ともかくいくつかのルートが視察対象になったげな(三河弁)。たとえば盛岡・宮古ルートとか(名前は恥ずかしくて書きたく無いっす)、私も走ったことありますけど、そりゃあ風光明媚な道っすよ。すんばらしい。実は結婚する前に現在の妻と1週間かけて岩手を回ったことがあるんですが、今でも妻にとっては想い出深い土地みたいですね。その後もアンダルシアとかトスカーナとかブルゴーニュとかハワイ島とか、色々な土地をドライブしたもんですが、数日前に「おい、この夏はどんなところに行きたい?」と尋ねたら、「岩手みたいなとこが良い」とかなんとか。

 なるほど。しかし岩手は、というか東北は福島以外だいたいドライブしたことがあるので、ちょっと良いアイデアが思い浮かばない。そこで私が思い出したのは、国道471号線です。この国道は岐阜県の上宝村から能登の羽咋まで続く長い道なんですが、その出だしの部分。安房峠を越えたところから神岡まで。

 ここは私、何度も走ったことがあるんです。高原川という神通川の支流沿いを延々と走っていくんですが、いつ走っても感動的に美しかった。まだあの美しさが残っているのなら、今度はゆっくりとあそこを走ってみたい。途中でキャンプなんかしながらね。

 今回の「シーニック・バイウェイ・ジャパン」では471号の一本南の国道が視察ルートになったようですが、いやいやどうして471号も素晴らしいですよ。私が知っているままなら。

 そう、日本の街道風景、割と簡単に破壊されます。一に野立ての看板。二にデザインセンス劣悪なロードサイドチェーン店。マクドナルドにヤマダ電機、カメラのキタムラ、ブックオフ、華屋与平衛。こういうものが湧いたらもう終わりです。いや、一旦休みです。あんなものはどけりゃあ良いんだから。

 「シーニック・バイウェイ・ジャパン」もその辺は気付いているようで、現在の議論では次のような案も出ていますね。

・ 景観整備等
・ 看板・電柱等の撤去等
・ デザイン・標識の統一
・ セットバック

 美しくない野立ての看板の撤去はまず基本ですね。スペイン名物の牛看板くらい洗練されて土地に溶け込んだ看板ならともかく(かつてスペインでも汚い野立て看板撤去が行われましたが、牛看板だけは国民の反対多数で残されたそうです)。それからデザイン。全国どこでも同一デザインがロードサイドチェーン店の基本にして商売の戦略でもあったわけですが、それも止めてもらえれば素晴らしい。セットバックというのは、建物を道ギリギリに建てるのではなくて、敢えて少し引いてもらって建てること。これによって建物と道の間の空間が半公共化され、人が入り込めるようになる=人が集まるというわけです。

 もちろんこれらの施策は私権の制限を伴うわけですが、それによって得られるものが大きい。それでそこを訪れる観光客が増えれば、より沢山のお金が落ちるわけで、結局はみんな得をする。

 そこをいかに気付かせて、政策的に誘導していくかが、このプロジェクトの勘所でしょうね。日本の風景、汚い野立て看板とロードサイドチェーン店さえ無ければかなり、いや、世界でも一級の美を備えています。頑張って手入れしていきましょう。