以前にもご紹介したインドネシアのダブル・アウトリガー・カヌーによる太平洋周航の旅ですが、いよいよ5/22に開始されるようです。
以下、5/18付け「じゃかるた新聞」より抜粋します。
「 西スラウェシ州の海洋民族マンダル人の伝統的なアウトリガー船「サンデック」を基に作成した「サンデック・エクスプローラ号」(全長十七・三メートル、幅一・四メートル)で太平洋を横断しようと、海洋冒険家の山本良行さん(五六)が十五日、同州マジェネを出港し、南スラウェシ州マカッサル港に向かった。山本さんの冒険の目的は、古代ポリネシア人の南米大陸への自力航海説を実証すること。南米からポリネシアへの航海は一九四七年、ノルウェー人のヘイエルダール氏が筏(いかだ)船「コンチキ号」で成功させているが、逆のルートでのアウトリガー船の航海はまだ誰も成功させていない。一年をかけ約四万キロを走破する山本さんの航海が成功すれば、ポリネシア人が南米に到達したことを示す証として人類史に大きな足跡を残すことになる。
「サンデック・エクスプローラ号」を製作してきた西スラウェシ州ポレワリ・マンダル県パンブスアン村では十四日、村人総出の進水式が行われた。
約三カ月間、製作に携わった船大工の棟梁フセインさん(三五)らが、コメ、卵、サロン(腰布)、香木、水を供え、船の「へそ」に当たる船倉の中心に金の指輪を埋め込む儀式「トンボン・ポシ」を行った後、村人たちが船を押し出したが、五トン以上もある船を海に出す作業は難航。三十分後にようやく進水に成功し、大きな歓声が上がった。」
「サンデック・エクスプローラ」号は現在マカッサルに居るようで、22日に正式に冒険航海が開始されます。昨日の記事でも少し触れましたが、サツマイモのポリネシア伝播を説明するには南米人の漂流かポリネシア人の往復航海か(謎の中国人か)しか無いのですが、より可能性の高いのはポリネシア人による8000km往復航海。
ところが、記事にもあるように、古代の航海技術でポリネシアから南米まで渡りきった実験航海はまだ無いんです。
1956年、「モダン・カタマランと航海カヌーの種を蒔いた男」という記事で紹介したエリック・ド・ビショップの筏「タヒチヌイ」号は、タヒチから出航してあと一息という所まで南米に迫りました。しかしファン・ヘルナンデス島沖で暴風雨に遭い遭難してしまいます。
また、アオテアロアの航海カヌー、「テ・アウレレ」の次の目的地も南米です。アオテアロアのマオリはサツマイモを特に神聖視しているそうですから、南米行には特別なこだわりがあるのかもしれないですね。
果たして南米への古代式実験航海の一番槍は山本さんという事になるでしょうか。航海士を務めるのはブギス人のダエン・マナックさんという方だそうで、この方は山本さんが1992年にインドネシアから東京までアウトリガー・カヌーで航海した際にも同行した盟友なのだそうです。フィリピン・インドネシア間の多島海で培われた技術が太平洋の大海原を駆ける。まさに後藤明さんの仮説を地でいく事になりますね。
なお、画像を見る限りでは「サンデック・エクスプローラ号」は既報通りのダブル・アウトリガー・カヌーです。横木の数はかなり多めですから、それなりに強度は出ているのでしょうね。問題はタッキングですが、世界一周ヨットレースでもトリマランで出ている人がいるくらいですから、何とかなるのかもしれません。