東京インディペンデント2019設置の日

東京インディペンデント、参戦しました。
東京インディペンデントとは東京芸大陳列館で4/18-5/5の間に開催される、誰でも無審査で出展可能な美術展です。
こういう美術展を日本では一般に「アンデパンダン展」と呼びます。アンデパンダンというのはフランス語の Indépendantsをカタカナに写したもので、こうした美術展の本家であり元祖は1884年からパリで開催されているSalon des Indépendantsです。
誰でも無審査だから大したもんは出ないでしょと思うなかれ。
フランスの本家に出展した画家の中には、セザンヌ、ゴーギャン、トゥールーズ=ロートレック、ルドン、ピサロ、スーラ、ゴッホ、アンリ・ルソー、マチス、ボナールなんてウルトラビッグネームがゴロゴロです。
また、ニューヨークで1917年にSociety of Independent Artistsが開催した同種の展覧会には、現代アートの元祖とも言われるマルセル・デュシャンの「泉」が出展されかけました(アンデパンダン展なのに出展拒否されて騒ぎになった)。
もちろん、アンデパンダン展に出展される作品のほとんど全ては美術史には残らずに消えていきます。それは、しゃあない。
ですが、中には美術史に残る何かが紛れ込んでいたりする。
それがいきなり芸大で開催されることになったわけです。
面白い。ちょうど仕事も暇だし、参加したるか。
そう思いついて、教え子息子を誘って3人でエントリーしたのでした。
さて、ここからは当日の時系列順にご紹介です。
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教え子は関西に転勤してしまったので、事前にうちに作品を送っておいてもらいました。自分の作品と息子の作品も積んで、息子が中学校から帰ってくるのを待ちます。搬入のための駐車許可は17:30以降だったので、少し時間調整をして16:15出発。

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甲州街道を東へ。つつじヶ丘駅前を通過。大学を出てから3年間、この辺に住んでました。大学院に入る前ですね。

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芦花公園。首都高は渋滞しているので甲州街道を使います。

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初台の先あたりですね。

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新宿。御苑の北側です。

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曙橋。大学を出て働いたHR系スタートアップの創業の地です。今はパソナグループに買収されて上場廃止されちゃった。当時はまだ自分含めて10人居なかった。

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市ヶ谷。ここを左折してちょっと行ったところに妻の実家がありました。

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水道橋。タクシーばっか。しかもマナー悪い。

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外堀通りから白山通りへ。

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菊坂から本郷弥生へと向かいます。私の父方の祖母の梅子さんはここからほど近い、駒込の常徳寺の娘でした。

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谷中。もう東京芸大上野キャンパスはすぐです。

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着いたどー! ダッシュボードの上には事前に発行してもらった構内駐車許可証。

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車を置いてからクジを引きました。744番、772番、774番だっけな?

陳列館の周辺はまさに文化祭のあの雰囲気。
しかし皆さん、マナーが良いですね。おかしな人はいっぱいいましたけど。路上パフォーマンスする「アーの人」とか。
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作品を車から出して待機。奥に座っているのは、なんとよく見たら会田誠氏ではないですか。最近もなんだかよくわからない人に記者会見で非難されちゃったり、定期的に炎上する方ですが、実物はごく穏やかな雰囲気でした。

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しかし、待てども待てども会場内に入れません。そりゃそうだ。この小さな会場に最終的に625人が作品を押し込むことになったんですからね。だんだん、どこに展示したら良いのか、場所を見つけるのも難しくなってきます。

運営の皆さんは、少ないマンパワーでフル回転。さぞかし大変だろうなと思いました。きっと集まった作家はみんな同じこと感じてたんじゃないですか。だから、運営さんにクレームを入れるような人は皆無。譲り合いと助け合いと許し合いの空気に包まれた場所でした。
この時点で、ああ、来て良かったなと。
息子にこの空気を体験させてやれただけでも、勝ち。そう思った。彼が普段出入りしているcoderdojoやタミヤプラモデルファクトリーのミニ四駆コースやMakerfaireと基本同じ、「俺たちみんな作るもの同士だから」というフラットな連帯感なんですが、ここは更に、プログラミングやミニ四駆みたいな、わかりやすい凄さの尺度が無いですし、クリエイターの人口密度も異常なわけです。これは極めて貴重な時空間です。東京インディペンデント、この時空間を体験出来たのは出展者の特権ですね。来て良かった!
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しかし時間は容赦無く経過し、運営さんたちは何度も「とにかく19時までに来てくれた人の作品は全部展示しますから」とアナウンス。それとなく運営さんたちの会話も聞いてましたが、たぶん消防法まわりだろうなあと察しました。緊急避難経路にモノ置いちゃいけないんですよ。自分もかつて事業所立ち上げの仕事で何度も神田消防署に通ったんで、大変さはわかります。その状況でなお全部展示する決断をされたのは、大変な重みがあります。

これは、作品を開梱しているところ。
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ついにくじ引き順から、作品の大きさで分けて会場内に誘導するやり方に。最後の手段ですね。

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入場待ちの列の横では何故かエスプレッソのサービスが始まりました。息子は列の中で待ってる皆さんにエスプレッソをデリバリーする係を買って出てました。助け合いです。
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我々は1階に設置するよう指示されました。でも、どこに・・・・?

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名和晃平さんの作品に仮面ライダービルド足してやろうか?

かなり本気で名和晃平に乗ろうと思ってましたが、この作品のコンセプトは戦車のキャタピラー痕のような版画と、兎の絵が揃ってこそ。なので

こんな感じで。

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うわ、かっこええ!!

加藤晃生「Rabbit / Tank」(2018)

この後、仮面ライダーが倒れてしまったようです。どなたでも結構ですので、会場で気づいた方、仮面ライダーを立たせてやってください。
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息子の作品は脚立の向こう側に。

Kiiroinya 「氷の木」(2018)
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この大根娘が教え子の作品です。

奥田ぴよ子「大根marriage」(2019)
設置を終えて芸大を出た時には20:35でした。
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外堀通り。

稲城に戻って来たのは21:30。
息子と「かつや」でとんかつを食って、家に戻ったら22:00。
楽しかった。
会場内は「作る」「表現する」ということへの情熱を共有した人々だけが集まったことで生まれた、熱さと平和が共存した稀有な空間でした。

出展者の中には私と思想的立場が全く違っていて、以前にブログで厳しく批判した作家もおりますよ。でも、あの中では休戦です。
だから「Rabbit / Tank」なんです。わかるかな?
わからない人は仮面ライダービルドを履修しましょう。
東京インディペンデント、開幕が楽しみです。