荒川法面闘争の個人的総括

荒川河川敷の朝霞~和光辺りで、MTBやシクロクロスバイクに乗ったおじさんたちが9人で土手の堤防の法面を上って遊ぶ話を雑誌&ウェブ記事にしたら、それは無いんじゃないのという批判と、これくらいでガタガタ言うんじゃないよという反論が発生してネットバトルになっていた件。

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(上記リンクより)

土手に出来た泥の一本坂道を見つけたら、土手ヒルクライムが突然開幕する。急勾配の泥道はチカラでは制覇できない。キモは荷重とペダリング。小さな路面変化にも注意が必要。油断すると土手の泥が牙を剝く。でも転んでもケガしずらい(原文ママ)のが土手の不思議。アスファルトに無い優しさが、土手にはある。


※そんな件があったんです最近
※どマイナーな趣味の世界の話だからね

自転車で堤防の法面を走るのは河川法違反なんじゃないのかという立場もあれば、いやこれは法律違反じゃないという立場もあり、また、同じ自転車乗りなのに行政にたれ込むなんてお前どういうつもりだという憤激の声もあり、局地的にまた遺恨が新たに色々と生産されていました。

で、私の見解。

1) 自転車で堤防の法面を走るのは河川法違反なのか

判例が無いようなので現時点では不明でしょう。刑事裁判になった場合はどの程度のダメージがあったかで個別判断だと思います。今回の記事は走った跡が写真に写っていなかったのでなんとも言えません。

が、管理している河川事務所は違法と認識しているということが関係者の聞き取りにより明らかになったので、あまりおおっぴらにはやらない方が良さそうです。河川事務所が刑事処分を下すことはありませんが、スポーツ自転車に乗りづらくなるような各種の工事をする権限は彼らにあります。

例えばこんなの

自転車と歩行者の事故が絶えないことから、たびたび話し合いの場が設けられたり、イメージハンプを施工したりしたものの結果が出なかったため、2018年中旬に高速走行する自転車の減速を促す対策として、一部区間で土系舗装を施す工事が行われた。

担当河川事務所からの「お願い」も4年前には出ています。

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堤防法面の裸地化(踏み荒らし・轍)の状態を確認しました。
裸地化した箇所を通行すると、更に裸地化が進み堤防が弱くなる原因となります。
河川敷を利用する際は、階段・坂路を利用するようお願いします。


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2) では荒川でなければ遠慮なく法面をMTBで駆け上がって良いのか


程度問題なので、植生を刳り取っちゃうくらいの使い方は止めた方が良いでしょうし、普通の人は法面からいきなり自転車が飛び出して来るとは思っていないはずなので、そこも十分な安全確保が必要でしょう。

河川敷ではシクロクロスの競技会や練習会を開催することも多いです。その際には河川事務所に使用許可を出してもらわなければいけないわけです(例えば今、稲城市が仲介して多摩川河川敷でのシクロクロスの競技会の準備が進んでいますが、まず問題になったのは、河川事務所とどう関係を構築するかでした)。
ですから、オフロード用自転車に目をつけられないような工夫は大事ですね。

3)どマイナースポーツの対外的イメージ管理の視点ではどうか

個人が捕まらなければ良いとか、人身事故を起こさなければ良いというスタンスももちろんアリですが、ただでさえマイナーなスポーツで走る場所が不足し、それゆえに新規のファンが入って来づらいという日本におけるMTB環境を考えた時、MTBに乗らない人たちから見てMTBがカッコよくて、楽しそうで、お天道さまの下で胸を張って遊べるスポーツであることは大事だと思います。

例えばSUPが急速に普及したのは、あの新しいスポーツがカッコよくて楽しそうでアングラ臭が皆無で誰に対してもオープンな雰囲気をプンプン漂わせていたからだと私は考えます。

大事なのでもう一度復唱。

「アングラ臭が皆無で誰に対してもオープンな雰囲気。」

こうした環境を構築するために特に頑張っていた人たちは、管見の限りでは、国交省の河川や港湾関係部署と戦略的に仲良くして出艇スペースを開放してもらう(「え? だってここ使っても法律的に問題無いですよね?」みたいなノリで突っ込まない)などのイメージ管理に気を使い、それを過去6年か7年ほど積み上げてきた人たちのようです。例えば水辺荘さんとか。

そこには学べることが色々あると思います。

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行政の目を盗んで何かをしてみせることを武勇伝的に捉える価値観はアングラ文化です。ヒップホップの人たちのグラフィティとか暴走族みたいなものです。そういうノリの世界には親子連れや若い女性は滅多に入って来ません。ファミリーや若い女性が距離を置くようなアクティヴィティは永遠に日陰者です。
また、荒川河川事務所に相談に行った人を非難している側にも、JCFと意見が合わなくなると気軽に色々な外部の公的機関に相談している人が存在するわけですから、説得力を感じません。

4) 議論のやり方

議論の過程で「荒川の堤防の法面に9台の自転車が繰り返し突っ込んでいく遊びをしてそれをマスメディアに公開することの是非」から論点が果てしなく乖離し、過去の遺恨エピソードを引っ張り出してきての個人への人格攻撃であるとか、論敵に低所得層というレッテル貼りをするなどの見苦しい論が飛び交ったことは(しかも元全日本MTBチャンピオンが先頭を切って)、建設的な議論を難しくしたと同時に、MTBやシクロクロスに乗っている人々全体のイメージ低下を多少なりとも引き起こしたように思います。

5) 今後

せっかく奥多摩のMTB問題のときに東京都MTB利用促進連絡協議会という任意団体を作ったのですから、そこで合意形成をされるのが理想的ではないかと思います。が、現実的には関東のMTBの世界にはもはや埋めがたい対立線が幾つか生まれているのも事実ですから、せめて誰からも見える場所での口汚い罵り合いはストップするなど、MTBの世界自体が外からどう見えるのかを意識した振る舞いをしていくべきではないかと考えます。

以上、個人的総括でした。