安曇野エリアには大きなマウンテンバイクコースが二つあります。
安曇野市マウンテンバイクコースと国営アルプスあづみの公園大町・松川地区マウンテンバイクパークです。
この二つは混同しやすいのですが、内容と性質が全く異なるので、犠牲者時間を無駄にする人が出ないように整理しておきます。
安曇野市マウンテンバイクコース「全日本選手権の練習のために作られた難易度S級のコースしかない場所」
こちらは運営スタッフさんが「うちは全日本選手権を目指す人のためのコースなんで」と公言しておられるくらいで、難易度はシャレになりません。知人によると「富士見パノラマを下れる程度では無理」だそうです。受付での「あなたたち何しに来たの?」感はそういうことだったかと後で気づきました。
安曇野市では、マウンテンバイクの魅力を多くの人に知っていただくことで、この施設がアウトドアスポーツの拠点となり、観光の促進や教育活動、健康の増進に寄与することを目指します。
公式ウェブサイトにはこんな文言もありますが、そういう場所ではまったくなかったですね。機材とクルマで合わせて300万円くらいは突っ込んでいる人でないとお呼びでないようなエグいとこでした。
もう少し詳しく書いておきますと、まあどこのコースにもある練習用のパンプトラックや木橋は良いんですよ。それは入門者や昔の機材でも走れます。でもそこだけです。
公式サイトのコースマップは解像度が低すぎるのでこちらをご覧ください。
(出典:一般社団法人MSJ「安曇野市マウンテンバイクコース2024」リーフレット)
入門者・初心者が安心して走れるのは「コネクトパーク」だけです。私が行った時には「コネクトパーク3」はタイム計測装置を設置して周回している利用者がいて、入ろうとしたら「タイム計測しているんで入らないでくれ」と言われました(タイム計測が終わってから入れましたが)。そういうとこなの?
「ベーシックトラックス」と「クロスカントリーコース」のスタート地点は一緒ですが、そこから二つのトラックの分岐まで、よほど高性能(軽いカーボンフレームでなおかつトラクションがかかるリアサス付き)か電動でないとひたすら押し上げ(MTB用語で言う「担ぎ上げ」)です。乗車率0%でも不思議じゃないです。ベーシックトラックスは一番カンタンらしいのですが、この短い周回しかも半分担ぎ上げを走るためにわざわざ行くとこじゃないです。これなら稲城市のスマイルバイクパークで十分。中央道の渋滞も無いし。
これが安曇野市マウンテンバイクコースのベーシックトラックス。この程度なら多摩丘陵にいくらでもあるんですよ・・・
クロスカントリーコースはベーシックトラックスと分岐してからしばらくぐにゃぐにゃしてますが、これ全部上りです。電動じゃないとやってられないレベルでひたすら上っていきます。
それが終わると酷使されてエグれたシングルトラックのかなり急な下り。ドロップオフもある。概ねこういう世界観。
簡単そうに走ってるように見えますけど、あの鋭角のターン、年単位で走り込んでないと出来ません。スキーで両足揃えて曲がれるようになるまでにどれだけコースに通うか、あれと同じ感じかな。このエグれてツルツルになった下り坂を気合で乗れる人であっても、あそこは全部自転車から下りてMTBの向き変えることになります。んなもん楽しいわけがないですよね。私は全然楽しくなかったぞ。
ふじてんあたりに5年くらい通ってないと本当に無理です。ふじてんに5年通うということは、こういうものが自宅にあるということです。
でも実際にはこういうのじゃないと上りが辛すぎます。
安曇野市マウンテンバイクコースをプロデュースした小林加奈子さんもバリバリに宣伝に起用されてるヤマハの電動。知人が乗ってますがもう別種の乗り物ですね。全てがチート。Lv.5の初心者がこれ装備するとLv.35くらいに持ち上げてくれるくらいのチート機材。
ヤマハの独創性とハイスペックな車体性能、
そして人間感覚を最優先したアシスト性能が
高次元で融合したYPJ-MT Proは、
難所が相次ぐオフロードすら軽快に走破する。
抜群のレスポンスを発揮するドライブユニット「PW-X3」や、
優れた前後サスペンションが路面からの衝撃を吸収し、
ライダーの要求に応えるパフォーマンスを実現。
木の根を軽々と乗り越える安定した走行感と、
圧倒的な登坂能力、そしてコントロール性の高いジオメトリーは、
狭所の多い日本のトレイルに最適だ。
でしょうね。そう思いますよ。税込み74万8000円からですけどね。
安曇野市マウンテンバイクコースの受け付けの前にパンフとディスプレイのデモ車が2台か3台ありました。つまり、全日本目指す人じゃなければヤマハの電動MTB買うか借りるかしてねという、マジそういうとこです。そうじゃなければこの状態で3キロの山道を歩くために行くだけの場所です。ただの苦行。基本、アップダウンが激しいので、下ったぶんは上がらないといけないんですが、その上がりの斜度もきつめなんだわ。下りは下りで難易度高すぎて乗車率激下がりだし。何しに行ったの。ほんとそれ。国営マウンテンバイクコースがあって良かった。
技術と体力が普通じゃない人か、それを札束で補える人だけが楽しめるマウンテンバイクコース、それが安曇野市マウンテンバイクコースです。
そういう人は絶対楽しめます。超おすすめです。
でも、入門者や初心者が行ったらマウンテンバイクの楽しさなんて全く味わえなくて、むしろ心の傷を残すようなとんでもねー上級者コースです。昔、スキー入門者をいきなり高難易度コースに連れて行って心の傷を植え付けてそのままスキーやらない人にしちゃう上級者がいっぱいいましたが、あれのマウンテンバイク版。とにかく初心者・入門者は行っちゃダメだからな! 行くなら覚悟を決めてから。
「まずは最高難易度のコースをMTBを押しながら3キロ歩いて回りたい」入門者には最適なコースですよ。はい。
国営アルプスあづみの公園大町・松川地区マウンテンバイクパーク 「初心者でもほぼフルコース楽しめる、旧車でも安心の癒やしのコース」
最初に結論書いときます。
「軽自動車と同じ値段の電動MTBを持っているか、MTB-XC全日本選手権を目指している人以外は、安曇野市マウンテンバイクコースではなく国営アルプスあづみの公園マウンテンバイクパーク一択」
だって国営アルプスあづみの公園マウンテンバイクパークの受け付けの人が「安曇野市行ってみたけど全く無理でこっちに逃げてくる人多いんです」って苦笑してましたから。
こちらはいわゆる林道的な2.8キロのコースと、プラスアルファでシングルトラック(テクニカルトレイルコース(1.7km)とフロートレイルコース(0.7km))が2.4キロあります。もちろんパンプトラックなどの練習場所もあります。
何度でも書きますが全日本選手権を目指さない人は絶対こっちです。シングルトラック超楽しいです。こういうものを楽しむためにわざわざ泊りがけで遠出したんだよ俺は。
シングルトラックの難易度は多摩ニュータウン周辺のシングルトラックとほぼ同じですね。ただしアップダウンが緩やかなのと周回出来るのと、それ用のコースなんで途中で色々なしかけ(パンプトラックみたいな障害物、ロックセクション、飛びたい人向けのドロップオフ)もあります。
歩行者とのすれ違いでの降車もしなくていいし、鹿の群れが凄い速度で走り抜けていくのを見るのも楽しい。
カーブも緩やかなんでMTBから下りなくても曲がれますね。安曇野市マウンテンバイクコースの方はカーブも鋭角だし、地面は傷めつけられている上に傾斜も急だから、曲がっている最中で(安いMTBは)地面のグリップが抜けてツルッと転倒です。そんなとこばっかです。そんなとこしかないとも言う。
ここなら、このレベルのMTBでも十分に楽しめます。ヤマハとはゼロの数が一つ違う。レンタルもあります。レンタルでも全コース楽しめる。(レンタルなら安曇野市の方にもありますが事実上は1時間2000円の電動一択だしそもそもファミリー利用は想定されていない気がする)
問題は岡谷ジャンクションの渋滞と小仏トンネルの渋滞ですね。
おすすめは1泊旅行の2日目の午後の利用かな。豊科までは鉄道で往復で、現地でレンタカー移動。初日は美術館とかトレッキングで楽しんで、2日目の昼に公園のレストラン(蕎麦がめちゃくちゃ美味かった)でご飯食べてから2時間くらいMTBを楽しんで、立ち寄り湯で汗と泥を洗い流してから帰る。
立ち寄り湯はここがおすすめ。大人600円。
マウンテンバイクはもう日本では滅びるんじゃないの、と思った
息子(小学校低学年から MTBで多摩ニュータウンの里山を走っていた)とクルマの中で会話しました。
息子「(安曇野市マウンテンバイクコース)何であんな難しいの?」
私「MTBの機材の性能がどんどん上がっているから、それに合わせて競技のコースの難易度も爆上がりする。その練習用のコースを作ろうとするとああなる」
息子「あんなの走れるわけなくない?」
私「100万円のマウンテンバイク買って月2回は専用コースに走りに行ける人なら楽しいと思うよ」
息子「(笑)」
私「だからみんなマウンテンバイクなんか乗らなくなってグラベルロードに行っちゃったんだよ」
息子「だろうね」
私「マウンテンバイクは滅びるね、日本では。新しく始めるハードルが上がりすぎた。でもしょうがない。好きにしてくれって感じ」
メーカーが高単価高利益率のものを売ることばかりに注力してるのが日本では全部逆回転になってますよね。メーカーとしたら電動売りたいわけですよ。1台50万円以上だから。開発費も宣伝費も電動最優先。でも電動ってさっきも書いたけどチートにも程がある機械だから、電動でわーって楽しめる場所は入門グレードでは全く無理になる。安曇野市マウンテンバイクコースがまさにそれ。
じゃあいきなり電動で入門する人って誰? 私みたいなアラフィフ以上のオヤジで子育ても終わってお金に余裕が出てきた人ですよ。今は日本は少子高齢化で一番カネ持ってて人数も多いのがここだから、市場として短期的に見たら美味しいよ。でもそこを刈り尽くしたら終わりですよ。裾野を広げる活動してないんだもん。入門グレードで走って楽しい場所を10カ所作ったら、1台50万円以上でないと走れないとこを1カ所作るくらいじゃないとあかんのよ。本来。
だから、私の同世代のMTBオヤジたちは電動で大喜びしてるけど、私は白けてます。もうダメなんじゃないの日本のMTBはって。電動MTBは本来、別ジャンルなんですよ。MTBと同じジャンルとして扱っちゃだめなやつ。スキーやスノボのゲレンデをスノーモービルが席巻している感じかな。あるいは手漕ぎのカヌーでみんなが楽しんでた場所にウォーターバイクオヤジが大挙襲来したみたいな。