良いギターって何かということを、30年前のフェルナンデスを弾きながら考えた。

たしか最初のエレキギターを買ったのは1987年でした。アリアプロの安いやつです。Warriorとかいうペットネームが付いている3シングル・ピックアップで、ブルーメタリックだったかな。ネックのシェイプはいい感じでしたが、とにかく鳴らないしパーツは安いし拡張性は無いしで、煮ても焼いても食えないものでした。5年くらい持ってましたが色々改造して最後は燃えないゴミに出したかなあ。

次に買ったのはバーニーのレスポールタイプ。これもイマイチ鳴らなかったんで学生の時に後輩に売りました。後輩はそれをえらく気に入ってくれたようで、多分まだ彼のメインギターだと思います。私の結婚披露宴でもそれを弾いてくれました。
3本目に中古で買ったのがこれです。1989年だったと思います。
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フェルナンデスが1986年に1年間だけ売ったSTF-145というモデルに非常に近いものです。セン(ハリギリ)のボディにメイプルネック、ローズウッド指板。ピックアップはEMGのSAが3個。ピックガードがブラス。当時のギターヒーローの一人、スティーヴ・ルカサーがヴァレイアーツで作ってもらっていたもののコピーですね。
問題はトレモロユニットで、カタログではフェルナンデスFRT-9が装着されているはずが、これはFRT-7でした。ギター商売なんかいい加減だから、FRT-7が余ったんでそれを付けて売っちゃったに違いないんですが。
当時、名古屋の平針駅前にあった愛曲楽器の養父さんという店員さん(東京学芸大卒とおっしゃってました)から3万で買ったのですが、養父さん自身「EMGとトレモロの値段で3万ね。ボディはイマイチだから。」とコメントしておられたくらいで、あんまり鳴らないボディでした。
それが30年を経過して、今なお私の手元にあります。
仕様は散々変わりました。
1990年にはFRT-7の変な金属製のマウントパーツ(フローティング状態で動かないようにする変なギミックが付いていた)を松下工房で撤去。ピックガードも黒の3プライにして、ピックアップはHSHにしました。トーンは撤去。
1992年にリアピックアップをディマジオTONE ZONEへ。
1996年にはトレモロユニットをゴトーのGE1996に交換。
それからしばらく仕様変更はありませんでしたが、2010年頃にミドルピックアップをフェンダーのノイズレスホットに。2014年にフロントピックアップをダンカンの59に。2016年にリアピックアップをダンカンのJB(1980年代中盤の製造で高校時代に買った)に。
しかし、そうした電気系統や金属パーツの変遷はあまり関係ありません。
1991年には、軽音のギター仲間から「それ、良い音するなあ」と言われるようになっていました。明らかに鳴りが良くなっていた。
今は当時より更に鳴りが良いです。より具体的に言うと、小さい力で弾いても十分なサスティンがあり、大きな力で弾いても波形が乱れない(限度はありますが)。
ギターの良し悪しを語る際にこの「鳴り」ということがよく言われますが、私は上記のような特性を持つギターが好みです。何故ならば、入力の大小に対して音量以外の特性(音色、残響、減衰)があまり変化しない領域が広いので、弾き手がギターの特性を考慮して弾き方を修正しなければならなくなる場面が少ないからです。
基盤となる音色、つまりボディの音色(それ以外は極めて一般的な素材と部品なので、このギターの特徴はセンのボディ材です)は、アルダーとアッシュを足して2で割ったようなものです。ストラトタイプのエレキギターのボディ材の主流2種の更に間にあるので、言ってみれば究極のニュートラルです。
ではそれはダメなのか?
私は全く問題を感じていません。むしろ変なクセがある材の方が、対応出来る曲想の範囲が限定されるので、投資に対するパフォーマンスは落ちると考えています。楽器を多数所有しても体は一つ、時間は有限ですから、結局のところ弾いて楽しい、気持ち良い楽器に手が伸びます。変な楽器はレンタルで十分なのです。
問題は、何故、1989年にはこのギターは本領を発揮していなかったのかということ。おそらくブラスピックガードや変態アームロック機構が主要なバッドインフルエンサーだったのだとは思いますが、確たることは言えません。
ただ、私の手元に来てから何故か常に数ある手持ちの中でファーストチョイスの位置を守り続けてきた。相性なのか実力なのかわかりませんが、その結果、こうして、主観的には非常に優れたギターとして今も現役なのですね。
だってクラプトンがブラッキーをデビューさせた時点で、ブラッキーは製造後17年。ブラッキーが引退した時点で製造後29年ですよ。このギターはブラッキーよりも長く現役なんです。それに、良いセン材のギターって今となってはレアです。これからもこのギターは弾き続けると思います。
舶来崇拝(外国ブランド崇拝、外材崇拝)をせずに、自分が良いと感じたものを30年使い続けたことで色々と学ぶところがありました。