シナジーを生み出せる学生を育てる

 後期の3年ゼミの展開を風呂の中で色々考えていて気づいたけれど、何らかのソーシャルビジネスを半期で形にするということを考えた時、去年の2年ゼミに所属していて、3年ゼミ選びの時に某ゼミの一次専攻を落ちてこちらに来た3人が、現在では切り札的な戦力になっていることに気づいた。並外れて真面目で何をやらせてもオールラウンドに良い結果を出すE(俺のスーツケースを椅子代わりにするけど)、見た目からは想像出来ないくらいにタフで論理的で責任感があるR(先生はカラフルだから写真に入らないでくださいとか言うけど)、人間的な包容力があり周囲を明るくしてくれるM(たまに軽~くポカかますけど)。いずれも、ここぞという時に投入出来る人材だ。

 その後、ゼミと並行してインターンシッププログラムでも鍛えているという事情があるにせよ、これだけの粒ぞろいの人材が揃ってこちらに来てくれたというのは、はっきり言ってザマーミロである。

 結局、人材の本当の価値やポテンシャルを把握するには1年くらいかけてつきあってみないとダメなのだろう(正直、去年の12月にはこの3人がここまで伸びると俺も思っていなかった)。うちのゼミは実社会とガンガン関わって、最終的には社会の中で価値を創造するところまで行くことを目標にしているので、他のゼミとは人材の見方、評価の仕方が違うのかもしれない。多少、周囲よりアタマの回転が速くても、ビジネスマナーや組織のルールが守れないような人材はゼロ評価になるのがうちのゼミの特徴だ。

 この3人も何か共通テキスト読ませてゼミ室で話しているだけなら、特に他の学生と較べてどうってほどでも無い。でも、現場行って人に会って情報取ってこいとか、この業務をこの締め切りまでに確実にやっとけとか、俺がいないとこでもメンバー仕切って話進めとけとかいう話になった時、この3人は安心して仕事を任せられる。もちろん、他のゼミ生もそれぞれ現場に出入りしながら自分の強みを磨いており、全体的に見ても今の3年ゼミのゼミ生たちは(合宿の成果もあって)、精鋭と呼んで良い集団に育ちつつあると思う。あるコンビは伊豆大島出身の都議会議員との面会のアポを取って話を聞いてきたし(しかも事後報告だった!!)、現地の飲み屋でローカルのおっちゃんたちと仲良く盛り上がって来たチームもいる。皆、自分自身の強み(ノリの良さ、丁寧さ、度胸などなど)を生かして出たとこ勝負で異質な人々とコミュニケーションを成立させている。コミュニケーション能力がどんどん磨かれているのだ。これは本当に大事なことだ。

 実際のところ、質的調査で論文を来年各自が1本仕上げることを考えたら、今身につけておかなければならないのは、現場での動き方であり、現場でのカンである。社会学のフィールド調査は現場に行ってなんぼ。現場で色々な人に会って話を聞いて繋がりをつくってシナジーを生み出していくという、総合的な能力が本来は必要だ。また、全体で16人のチームとして動いている以上、リーダーシップやフォロワーシップを育てる必要もある(とはいえ、就職予備校としてゼミをやっているつもりは毛頭無い。大事な概念や論点は何時間もかけて徹底的に検討させたし、もともと俺は哲学方面の出身だ)。

 この9月、3人はTNTエクスプレスや三菱商事ロジスティクスで厳しいインターンシッププログラムを経験する。きっと夏休み明けには、さらに大きく力強く成長しているはず。後期が本当に楽しみだ。

追記:1年、2年とゼミを担当して、今年度はTNTエクスプレスのインターンシッププログラムに参加している学生が、難関で知られる博報堂のインターンシッププログラムのセレクションも通ったとのこと。1年生の時には文章など粗が目立つ子だったけれど、2年間でおそらく3万字近くはレポートを書かせたし、現場も沢山経験させたし、グループワークも色々させた。今では文章力も論理的思考力もアタマ一つか二つ抜き出た力を持っている。そしてとにかく真面目で真っ直ぐ力一杯、周囲をぐいぐい巻き込みながら前に進んでいくという天性の素質があった。

本人は謙遜しているが、これは実力通りの順当な結果だと思う。