いまや「ホクレア」なんて単語もすっかり広まった日本です。
なにせこれ。安価な賃貸アパートにまで使われちゃうくらいっすからね。あとは何でしたっけ、美容室とかレストランとかマッサージ屋とか占い屋とか。マンガに出てくる少数民族にも「ホクレア族」なんてのが出現してるらしい。
良いね。こんな感じでどんどんいっちゃって欲しい。どんどん元々の意味から離れて正体不明の「ホクレア」が増殖していって欲しいね。パドラーとニューエイジャーの世界のサブカルチャーに留まっているより、その方がよっぽど面白いし風通しも良いですよ。ココ・シャネルのブランドマネジメント戦略を思い出します。
ご存じのように通常、ブランド特に高いブランド価値を維持しようとする場合、ニセモノやパチモノの退治に全力を挙げるものですよね。スタジオジブリなんか関連グッズのショップがたまたま原子力発電関係の建物に入っていただけで真っ青になったし。エルメスもヴィトンもロレックスも贋物を一生懸命取り締まってる。
ところがシャネルの発想は違ったのね。ココ・シャネルは贋物を放置していた。贋物が市場に充満することで、逆説的に本物のシャネル製品の輝きが増すと考えた。もともと毎年毎年、春夏と秋冬のシーズンごとに製品デザインを全部変えちゃう世界だってのも強みでした。ヴィトンやロレックスやエルメスと違って、何年何十年も作り続ける定番商品じゃないから、市場に出回る贋物の割合は一定レベルで頭打ちになっちゃうんですねえ。「今、この瞬間、シャネルが扱っている商材」のコピーはそんなに多くない。去年や一昨年のデザインなんか、むしろコピーしてくれれば宣伝になるくらいの話。
そうやってシャネルは自分のメゾンのデザインを、贋物本物入り乱れたシャネル服の頂点に常に置いておくことに成功しました。
「ホクレア」もそれで良いんじゃないですか。もともとあれは商売に使われてないもんだし、色々わけわからない「ホクレア」が増殖していくことで、色々な入り口からオリジナルの航海カヌーを知る人が増えてくれればね。特に「+C sword and cornett」みたいな国産ライトファンタジーコミック(フランス語版も出てるそうですが)、しかも絵柄はモロに同人誌出身という世界って、これまで「ホクレア」を知っていた人たちつまりはハワイマニア系とは近いようで遠いですが、そっち方面に「ホクレア」がどう受容されていくのかも興味あります。ディープエコロジーや9条/労働系環境運動には多分取り込まれないメンタリティの人たちなんで、その辺の地殻変動にも期待。