カイニョのある風景

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 富山県南砺市というところに行ってきました。
 
 ここは妻の父方のルーツがある土地なんですよ。妻から数えて3代前の人物が、現在で言う南砺市高宮の大地主の次男だったとかで、医者になって東京に出てきたのだそうです。戦前の話ですね。私の母方のルーツは同じ砺波平野の射水市大門というところで、これまでに何度も妻を連れて立ち寄っているんですが、妻のルーツがこんな近くにあったとは知りませんでした。

 ちなみにその射水市大門からは正力松太郎が出ていますが、何とその妻の3代前(曾祖父)や2代前(祖父)が正力松太郎の主治医をしていたんだそうです。それで、正力松太郎の娘さんの一人は今、稲城市内に本社がある「よみうりランド(南山の地権者でもある)」の社長夫人です。

 なんだか不思議な縁ですね。微妙な距離を保ちつつも「あらまたこんなところで」という感じ。

 話を戻しましょう。その高宮は見事なまでに散居の村でした。どの家の周りにも立派なカイニョ(屋敷森)があって、そして妻の旧姓と同じ名字の表札もありました。おそらくあの一帯に妻の遠い親戚が何軒もあるんでしょうね。

 さて、画像を見て貰うとわかりますが、この砺波平野の散居村は屋敷森に囲まれた戸建て住宅や納屋と、その周囲の水田という二つの構成要素からなります。これを見て私たちは何を感じるでしょうか? 「自然」ですか? 「宅地」ですか? この風景は明らかに「宅地開発」の結果です。江戸時代から砺波平野の開墾が始まり、水路が引かれ、水田が開かれ、カイニョに囲まれた宅地が生まれた。そして昭和時代の圃場整備(それまでの不規則な形状の水田を矩形の水田に作り直すこと)でも散居の基本構造は維持され、現在に至ります。

 鬱蒼としたカイニョには鳥や虫たちが住んでいますし、水田には(農薬などで往時に較べれば減っているでしょうが)カエルの姿も見られます。ここにはカイニョと水田によって成立している生態系があると言えます。現在の日本の住宅地に欠けているのは、周囲の生態系と付かず離れずというこうした距離感だと思います。まずは更地を作り、そこに新建材で外断熱の家を建てて内部の環境はエアコンで整える。家の周りには申し訳程度の木を植える。これでは家の中と外が全く繋がりません。距離感が∞なのです。

 今、稲城市では、カイニョのような屋敷森を何軒か共同で創って家の周囲の気候を改良し、家の内外の環境の断絶を解消した宅地を南山に造れないかという動きが芽生えつつあります。そうした考え方の提唱者として注目を集めている甲斐徹郎さんも近々ワークショップにお呼び出来ることになりました。

 これから面白くなりますよ。