今日から講義はアイルランド音楽の歴史を通じたマイノリティの文化戦略の話に入りました。とりあえずプレイリスト。
1:「まんまるスマイル」(作曲:中西圭三)横山だいすけ&三谷たくみ, 2008
2:Johnny Boyle's-King of the Pipers (Traditional), Altan, 1996
3:Allelujah(Live), (Mark Nevin), Fairground Attraction, 1990
4:A Stoir Mo Chroi,(Traditional), Rita Keane and Sara Keane, 1990
5:Bridget Cruise,(Turlough O'Carolan), Emily Mitchell, 1988
6:The Last Rose of Summer, (Traditional Arranged by Thomas Moore), Emily Mitchell, 1988
7:Finale (Tema russo): Andante; Allegro con spirito (Serenade for Strings in C major, Op. 48), (Traditional Arranged by Pyotr Ilyich Tchaikovsky), The English Chamber Orchestra conducted by Daniel Barenboim, 1973
8:Finlandia, (Jean Sibelius), New York Philharmonic conducted by Leonard Bernstein, Date Unknown
9:The Rising of the Moon,(Traditional), The Clancy Brothers, 1964
10:Kesh Jig/Give us a drink of water/Famous Ballymote,(Traditional), Bothy Band, 1978
11:Roisin Dubh(Black Rose)-A Rock Legend, (Phil Lynott and Gary Moore), Thin Lizzy, 1979
1曲目はアイルランド音楽の世界的な広がりを実感出来る事例として「おかあさんといっしょ」2008年5月の月間ヘビーローテーション曲を。2曲目はアイルランドの伝統的な舞曲の現代的アレンジ(フォークギターなど20世紀に取り入れられた楽器が入っているという意味)。1曲目と同じリズムパターン、旋法的なメロディ、フィドルの使用など共通点がわかるわけです。
3曲目は機能和声音楽と旋法的音楽の違いを理解するために。この後、アイルランド島の歴史を紀元前から現代まで概観して、近代以前のアイルランド音楽に最も近いと思われる音源を2つ続けます。キーン姉妹の古~いスタイルの歌と、アイリッシュ・ハープによるオキャロランの楽曲。続く「庭の千草」、チャイコフスキーの弦楽セレナーデ、シベリウスの「フィンランディア」。わかる人にはわかるこのチョイス、この並びですね。
何故、アイルランド音楽の歴史の話をしていて東欧や北欧のクラシック作品が出てくるのか? もちろん今日来なかった学生にはわからないでしょうが(笑)、この前後には結構大事な話をしています。
9曲目は実はショーン・オ・リアダよりアイルランド音楽史的に重要なんじゃないかと思っている連中です。その理由も講義を聴きに来た人だけが知っています。10曲目は若きドーナル・ラニー、マット・モロイ、パディ・キーナンらの灼熱の演奏。そして11曲目は4/7拍子と4/4拍子という変態な構成(フィル・リノットって結構この手のネタ好きなんです)のハードロック楽曲。中間部ではガリー・ムーアとスコット・ゴーハムのツインリードによる伝統的な舞曲メドレーが楽しめるのですが、ボシー・バンドやプランクシティやデ・ダナンのキャリアとシン・リジィのキャリアを重ね合わせてみると、1979年に「ブラック・ローズ」が出てきたのも脈絡を欠いた話ではなかったんじゃないでしょうか。