格差社会はジャンクフードを蔓延させる

 今日の公式ブログはガリー・クボタ記者の記事への直リンでした。内容はご覧の通り。ジャンクフードがミクロネシアの人々の健康を蝕んでいるという話。要約を作成しつつ「これは『Tarzan』か?」とか思っていた私です(ちなみに先日の同誌の健康チェックリスト、私はほとんど引っかからなかったです)。

 要約には入れませんでしたがセサリオさんはコンビーフを「ドッグフードと大差無い食べ物」と言っておられました。

 さて。他にもセサリオさんの指摘には注目すべき点があります。「タロやパンの実の調理は1日仕事だが缶詰ならすぐに食える」というところ。言い換えれば「まともな料理を作ろうとすると時間がかかるが、ジャンクフードならすぐに食べられる」。これはミクロネシアには限らない現象ですよ。アメリカ文化が侵入しているところなら大概そうですが、一番安価で腹がふくれるのはアメリカン・ジャンクフード。大量生産ハンバーガーに大量生産ポテトフライ。コーラ。サラダ風のクズ野菜。フライドチキン。脂肪分と糖分と炭水化物と動物性蛋白しか取れません。

 じゃあ何故そんなものを食ってしまうのか。アメリカ式グローバライゼーションが侵入した土地では、アメリカン・ジャンクフードを食べざるを得ない様々な罠が重層的に張り巡らされているんです。何しろ安い、早い、とりあえず腹が膨れる。だから収入の少ない層は必然的にそういうものに手を出さざるを得ない。

 また、「ワーキングプア」なんて言葉があるように、収入が少ないというのは働いていないからではなく、低賃金でコキ使われているから収入が少ないのです。低賃金だから長時間労働をせざるを得ない。きちんと食事を作る時間が無い。きちんとした食材が買えない。だからジャンクフードに手を出さざるを得ない。

 そして低収入層は教育にお金をかけられない。まともな食生活とはどういうもので、健康を維持するにはどうしなければならないかを子どもに学ばせることが出来ない。日本だったら小学校の家庭科で一応そういうことは教えるけど、あれは表面的な知識を並べているだけで、人間が生きるということとまともなものを食べるということが、いかに深いところで関わっているのかは、多分高校生以上でないと理解出来ないと思います。

 かつての伝統的な社会では、もちろんそんな食育は行っていませんでしたけれども、アメリカン・ジャンクフードも侵入していなかったから問題無かったんです。ですが、今やジャンクフードはそこかしこに溢れています。ジャンクフードから身を守るにはきちんとした食育が必要な世の中になってしまったんですね。ですが、現在の日本の低収入層のかなりの部分の子弟は、高校教育を受けられるような知性を準備する初等教育の段階で、既に学習を放棄してしまいます。

 伝統的な社会では、それで良かったんです。学校教育なんか受けなくても先祖代々の生業を継いで先祖代々の食い物を食っていれば、健康な一生が送れた。昔の話ですが。

 こうしてジャンクフードの罠は世界を蝕んでいくわけです。恐ろしや。
 
 先日、「日本の学校給食は1食あたり900円の費用がかかっている」というニュースが流れました。世のブロガーは一斉に「なんて贅沢な」「もっと効率化しろ」と書き立てました。・・・・アホかと言いたい。食い物にはカネをかけなければいけません。金田正一投手のお母様は、息子がプロ野球選手になるときにこう言い聞かせたそうです。「稼ぎは全部食べ物に使え」。

 子供たちにまともな食習慣を付けるのに1食コミコミで900円を高いという、その根性が国を滅ぼすのです。