最終的にO内がどういう判断をするのか密かに楽しみにしていることがあります。
オランダ人の名前。
3巻のテーマであるブレダ攻城戦は、スペイン軍を率いるのがジェノバ出身のイタリア人アンブロシオ・スピノラ将軍。これに対するはジュスティンとマウリッツのナッサウ兄弟。
この兄弟が問題です。
原著の表記はこうです。
Justino de Nassau, Mauricio de Nassau
これは少しフランス語風の呼び方ですね。フランス語だとMauritzではなくMauriceになるのですが。ちなみにこの二人は英語の文書ではこう呼ばれます。
Justin of Nassau, Maurice of Nazzau
deがofに変わりました。さらにドイツ語ではこうなる。
Justin von Nassau, Mauritz von Nassau
あれですね。ヘルベルト・フォン・カラヤン氏のフォンですね。イタリア語ならdaになる(レオナルド・ダ・ヴィンチのダ)。
Justin da Nassau, Mauritz da Nassau
だんだん妙な雰囲気になって参りました。面白いからもっとやってみましょうか?
アイルランド人風
Justin O’Nassau, Maurice O’Nassau
スコットランド人風
Justin McNassau, Maurice MacNassau
ということは「マクドナルド」をドイツ語名にするとこうなるのか?
Von Donald
日本人の名前なら、こうなります。
ナッサウのジュスティン ナッサウのマウリッツ
「みなもとのよしつね」「ふじわらのさい」と同じですね。ところでこの二人、地元オランダではどう呼ばれているかというと
Justinus van Nassau, Maurits van Nassau
さてここからが問題です。「カピタン・アラトリステ」の語り手はバスク人イニゴなので、彼がマウリッツやジュスティンを呼ぶ時は「ユスティノ」「マウリシオ」が正しいような気がします。しかし訳注で彼らに言及する場合はどうでしょうか。ヨーロッパ語圏なら自国語に変換しても問題無いのですが、日本語はヨーロッパ語のように相互変換可というわけでもないので(中国語名との間には相互変換可という合意があるので「マオツォートン」ではなく「もうたくとう」と読みます。韓国・北朝鮮とはそういった合意が無いので現地語の発音をカタカナに移しますね)、やはりオランダ語読みのカタカナ移しが正しい気がします。
ユスティヌス・ファン・ナッサウ マウリッツ・ファン・ナッサウ
さて、あとはO内が悩むだけですね。