就活の様子を聞いていると、「深掘り」なんて言ってる人はだいたい深い思考とは無縁なんじゃないのかと思う

新卒就活もたけなわですが、話を聞いているとジョブインタビューのやり方が形骸化していて時間の浪費になってるんじゃないかと思うことがあります。

私がダメだろと思うのは、インタビュイーの過去の経験について「その時何を考えていたの?」「その行動にはどんな意味があったの?」としつこく問いただす方法です。

何でダメかって?

人間の記憶は再構成されるからです。

中世司法と呼ばれる日本の自白万能主義の刑事司法の弊害を指摘する心理学の研究があるのですが、操作側の誘導質問で証人は自分の記憶をどんどん再構成してしまうことがわかっています。一言で言えば、人間の記憶などアテにならんのです。

だから、上記のようなジョブインタビューでフィルタリング抽出出来るのは、インタビュアーが好む形でエピソードを再構成して、自分自身もそのストーリーを信じている学生。

逆に、インタビュアーが好む価値観に対し「それは本当に正しいの?」というメタレベルの視点を保持出来るような自律性の強い学生は、そうした「阿吽の呼吸で落としどころを決めて綺麗な展開を作るインタビュー」が、つまり上手なプロレスラーのようなジョブインタビューの「受け」が苦手です。

もちろん、プロレスが得意な人材を採りたい会社ならば、ジョブインタビューの技の応酬の継続そのものを目的とするジョブインタビューに上手く付き合える、ショーン・マイケルスや丸藤正道のような学生を採れて嬉しいな♪となりましょうけどもね。

でも、ジョブインタビューの本来の目的が「相手がどんな人間かを、相手の心証を害さずに知ること」であれば、それに最適化されたスキルは、リクルートあたりが好きな「深掘り」「何故何故5回」という形骸化されたインタビュー形式を、それに何の疑問も抱かずに繰り返すやつとは別のものだと私は思います。