松ちゃん登場

 今日の1年ゼミには田布施の若大将、松村文彦さんをゲストでお呼びして、コモンズとか里山についての議論をしてきました。

 発表担当の学生が南山の里山コモンズ計画をネタに使ったのは正直ずっこけましたが(だって私が全部書き起こしたコモンズ住宅ウェブサイトの文章がもとになっていた・・・・・しかも学生それ気づいてなかった)、松村さんの話が殊の外面白かったんで、終わりよければ全て良しっつことでしょうか。

 松村さんの話のどこが面白かったかって、昨今のネット系トトロ里山論の出鱈目さが身も蓋も無い感じでさらけ出されちゃったとこですよ。だっていきなり「え~、里山ってうちの方じゃ言わないんですよ。昔から入会地って言ってますね。里山って新しい概念じゃないかと思うんですが・・・・」ですからね。

「ま、税金の関係もあるから厳密に言えばどこが誰の土地ってのは決まってるんですが、誰も知らないですね。みんな気にせずに使ってます」
「うちは7代続いてる農家なんですが、米は作れば作るだけ赤字になります。先祖代々の土地だから米作るのが当たり前だって感覚ですよ、うちの方はみんな。日常生活のサイクルに組み込まれてるっていうか。御飯食べたら皿下げるのと同じくらい当たり前の。」
「うちの山には杉と檜を植えてます。松は効率悪いんで、今は植えてません。今住んでいる家は3代前の先祖が植えた杉や檜を使って建てました。最近また、2代先の子孫の為だっていって檜の苗木植えました」
(「え~、じゃ松ちゃんさっさと結婚しないと!」という不真面目なツッコミ)
「本当は松も使いたいんですけどね、家には。松は粘りがあるから、梁には良いんですよ。松だけで家は造れないですけど。」
「基本的には、山も(栽培効率を考えるという意味で)畑と同じ感覚ですね。」
「田んぼと山と畑がセットになっているのが当たり前なんですよ、こっちじゃ。山仕事は田んぼが終わった時期にやるから、それで1年のサイクルが出来ているし。昔は、田んぼと山を持っている家でないと嫁が来なかった。今じゃ逆ですけど。」

 おわかりのように、まだまだ本来の日本の稲作農家の感覚を持っている松村さんにとっては、いわゆる里山(入会地)というのは、用材林であり農用林であり、つまりは作物の収穫まで数十年かかる畑です。トトロだ生物多様性だタヌキだヘチマだなんて都市生活者のロマンなんか本気で意味わかんね~って話でね。彼が町長選の時にプランとして出した里山条例ってのも、今日問いつめてみて驚いたんですが、「田布施に就農者を呼ぶんなら、農用林もセットで用意してあげないと農家として成立しない」という、現役バリバリ農家ならではの感覚で出てきた発想だったんですよ。佐藤・山田症候群と農用林との間には、かくも深い深いクレバスがある。

 残念ながらというか、今日松村さんが話してくれた、田布施に就農希望者を呼んで街作りプランについては、ゼミ生たちから徹底的に駄目出しを喰らってもうコテンパンでしたが、こっから立ち直っていくのが松村さんの本領です。ゼミの後は、私がご紹介した宇野健一さん・鈴木俊治さんのところに相談しに行った松村さんですが、さっき電話したら3人で飲んで盛り上がってました(笑)

 全てはここからですよ。今日、田布施の未来に確実に一つの種が播かれたはずです。