お供えもの

 日曜日は塾長と一緒に梅野木峠に上ってきました。

 私が第一報を聞いたのは裏磐梯でのこと。どうも峰さんらしいけど確認が取れない。そういう情報が奥多摩をホームコースにしているトレランの人たちのコミュニティから流れてきて、suuさんのところに急いで電話を入れてみたら、重い声のsuuさんが状況を説明してくれました。

 まだ確認が取れたわけではないとのことなので、確認が取れるまでは信じないよと伝えておいたのですが、やがて峰さんの訃報が携帯にメールで届いたのです。その頃、私は泌尿器系の精密検査の結果待ちで自転車はドクターストップがかかっていたのですが、ドクターストップが解除されたら最初のヒルクラは梅野木か風張林道へ峰さんの追悼に行く・・・これが私と塾長の間でごく自然に交わされた約束でした。

 うちから多摩サイ→睦橋通りと走って梅野木登頂。これは本来の私の脚ならさほどきついコースではありません。息子が幼稚園に行っている間にサクッとこなしちゃったりしてる80キロほどの練習コース。しかし1ヶ月ものブランクがあった上にこの猛暑ですから。いやあ~~~きつかったのなんの。武蔵五日市駅手前のミニストップで「千代鶴」のワンカップを買って駅で塾長と合流し、そのまま梅野木峠へと向かいます。塾長のレポートにもあるように、つるつる温泉手前で一気に斜度が上がるあたりまでは私が前を引いて25km/hから27km/h程度のペースで巡航。前に峰さんと走った時はここは既にインナーでしたが、この日は50Tのアウターにかけても難なく走れてしまいました。沢筋を吹き上がる風が私たちの背中を押してくれていましたから。あれは誰が吹かせてくれたのかな?

 つるつる手前で塾長が私を交わして先行。私はつるつる温泉でボトルに水を補給してからあらためて、峠上り口のあの激坂に突入。あの時はここで平地先行した峰さんを差したんだよなあとか、このコーナーではちょっと詰められたんだよなあとか、色々な想い出を噛み締めながら上りました。たまに後ろを振り返っては、ニヤリと笑ってみせたりしてね。

「峰さん、やっぱ私のが速いでしょ(笑)」

 頂上付近の斜度が緩い区間では、ダンシングで一気に加速してシフトアップ。岩井院前からは峰さんの最後の記録(42分)より8分速い34分での登頂でした。

 カルマを降りた私は杉の木の根本に「千代鶴」を置いて、塾長と一緒に峰さんに祈りを捧げました。峰さんは奥多摩の山に棲む精霊になったのだから、これからも奥多摩の山で遊ばせていただきます、よろしくお願いしますとご挨拶。これで少なくとも私と塾長は、奥多摩の山で事故に遭うことは無いでしょう。