アルゴナウタイの謎とき

 ディスカバリーチャンネルが放送したイアソンとアルゴの番組を録画しておいたんですが、先ほどメシを食いながら見ることが出来ました。息子が暴れるので最後は立食状態でしたが。

 イアソンというのは古代ギリシアの叙事詩に登場する英雄の一人で、アルゴという名前のガレーで「金の羊毛」を取りに行ったということになっています。なお、ガレーというのは船の形式の一つで、古代から近世にかけての地中海で使われた、舷側からやたらめったら櫂が突き出した船です。私が翻訳した「アラトリステ」の4巻でも出てきましたね。主人公アラトリステが従卒のイニゴに「ガレーの漕手にだけはならないように注意しろ」と諭す場面がありましたし、カディスからセビージャまでアラトリステとイニゴが乗っていったのもスペイン王室所属のガレーでしたか。

 「アラトリステ」が17世紀初頭の話で、イアソンは紀元前5世紀に書かれた叙事詩に出てくる、つまり紀元前5世紀に既に伝説になっていた人ですから、ガレーという船種がいかに長い間使われていたかという話ですね。2000年以上も地中海の連中はこの船を愛用してたわけで。

 さて。叙事詩ではイアソンは東の果て、コルキスという国まで行って「金の羊毛」をゲットしてきたとされています。この伝説が実話に基づいていたんじゃないか、というのが番組の趣旨です。実際、イアソンがたどった道筋は叙事詩にも明記されていて、彼はペロポネソス半島の東岸から船出して黒海の東の際まで行ったことになっています。じゃあ金の羊毛ってのは何だったのかというと、実はこの黒海の東の際、つまりグルジアになりますが、ここの山では昔から羊毛に砂金を含んだ泥を通して、砂金だけ回収するということをやっていたのだそうで。だから、イアソンというのは古代ギリシアから今のグルジアまで金の交易路を開きに行った人物がモデルなんじゃないか、というのがこの番組の主張でした。

 その主張の当否は私には判断出来ませんが、私は別の部分でこの番組に興奮していたんですね。

 ティム・セヴェリンが出まくりじゃん!

 ティム・セヴェリンというのは何度も紹介してますけど、まあ歴史に名を残した航海をテーマにした実験航海の第一人者ですね。とにかく色々な面白い航海をやっている人です。そのティム・セヴェリンが1984年にやったガレー船によるギリシア→グルジア間航海の映像がわんさか登場。しかもティム・セヴェリン御大のインタビューもあるじゃないですか(オクスフォード大出身というだけあって、いかにもという感じのオックスブリッジ的発音でした)。

 番組そのものも面白かったですが、本筋からちょっとズレたところで萌えてしまった私でした。