大石氏講演会

 今日は地域振興プラザで、かつて都市公団で数多くの緑地設計に関わった大石武朗さんの講演会でした。私はディスカッションのモデレーター役で顔を出して来たわけですが、実際色々と画期的な講演会だったと思います。

 まず、一見似たように見えるニュータウンの植栽が、場所により時期により全く違う工法で出来ているということが明らかになった。最初期の(諏訪や永山の)植栽は多摩丘陵の上に被さっている表土や関東ローム層を削って出てきた稲城砂層に苗木をぶっ込んだだけだったそうですが、稲城砂の水はけが最低だったため、3日も雨が降れば苗木は根腐れでパアだったそうです。

 そこでまず表土を確保しておいて、造成後に表土をぶっかけるやり方にしたわけですが、これも表土の下の稲城砂のとこで水が溜まって根腐れコース。結局、排水溝を念入りに準備しておくのでないと稲城砂の上の客土は話にならんと。

 その先の悪戦苦闘の物語も面白かったですね。永山あたりに黒松が沢山植わっているあれは、コンクリで仕切りを作って客土をぶっ込んで黒松を植えたもの。黒松の根は稲城砂に負けない稀少な根なんだそうです。でも黒松の特殊能力に頼った植栽なんで、いつまでたっても黒松以外の木が生えてこない(笑) 稲城中央公園の体育館裏の斜面緑地では、近所に生えていた竹を編んで土留めにして、表土を入れた。この斜面緑地は今では素晴らしいクオリティの雑木林になっているわけですが(タヌキも棲んでいる)。鶴牧西公園では果樹園エリアというのを多摩市に提案して、今もちゃんと公園内の果樹園として存続しているそうです。でもこういった実が出来るものを公園に植えると、収穫物の処理(公共性のある団体がディストリビューターにならんといけん)や行政との折衝が死ぬほどめんどくせえぞとかね。

 1980年に貝取の庚申塚に立っていたというシラカシの巨木を移植した時には1千万かかったとか、鶴牧タウンハウス街の脇の斜面緑地は手掘りの溝に客土して雑木の苗を植えたんでやたら手間がかかったとか。結局、大石さんが辿り着いたのが、幹を切り飛ばした根株を土ごとその辺に放っぽっといて、粗造成が終わる時に穴を掘って天地無用で根株を叩き込む工法。これは表土も根株にくっついているし、植木屋を使わないんでコスト激安だし、恐るべきことに活着率9割を遙かに越えるウルトラハイスコアだったそうです。ついでに根株の処理費用まで浮いて万々歳。南山でやるならこれがチョーオススメらしいです。

 この辺の技術論だけでも充分面白かったんですが、今日はその後のディスカッションがまた熱かった。何しろ「ちーむポンポコ」幹部の皆さんがご出席くださったわけでして、「南山の自然を守り育てる会」幹部と、区画整理後の南山の緑の管理について相当に建設的な意見交換が見られました。もっと言うと、「南山の自然を守り育てる会」菊地会長よりも、「ちーむポンポコ」武田代表(だよな)の方がトークは上手かった(笑) 菊地さんはいつも脱線に脱線を重ねて何が言いたいんだかわからんくなるけんね。とにかく南山には広大な公共緑地が生まれるわけですから、色々な団体がそれぞれ工夫をしながら緑地の管理を請け負っていくのがベストだと思いますよ私は。