琵琶湖の西側、湖西地域で最近ひそかに人気を集めている高島市の針江地区へ行って来ました。NHKが制作して2004年に放送したハイビジョン番組「里山~命めぐる水辺」で一躍有名になった場所です。かくいう私もその番組を見て以来、琵琶湖の水郷を見に行きたいという希望がありまして、実は2006年の夏に行く予定でした。その為に愛車に付けるルーフラックと自転車用の背面ラックを買い込み、妻の為にクロスバイクを手に入れ・・・・。
さて準備万端となった瞬間に、妻の妊娠が明らかになり、あわれクロスバイクは友人に払い下げ。私は一昨年も昨年も、夏休みはひたすら近所を自転車で走り込んで心の傷を癒すこととなった次第です。
今年こそは。この思いを胸に秘め、春先から息子を念入りに散歩させて基礎体力を養ってまいりました。そのかいあって息子も酷暑の近畿に耐えうる体力を獲得し、2年前の恨みをついに晴らす時が来たのでした。12年落ちの国産中型セダンではるばる西に向かいます(いや、別にお金が無くて買い換えないのではなく、まだまだ使えるから買い換えないだけですよ!)。もうね、屋根の上にも荷物満載だわ、トランクの後ろには自転車がぶら下がってるわ、よくもこれだけこの車に積んだよなという状態。助手席なんか取っ払っちゃって、クーラーボックスだのカメラバッグだの折りたたみのテーブルだのが跡地に詰め込まれてましたからね。
話を戻して針江地区です。ここは地区内のあちこちから泉がわき出していまして、上水道・下水道という近代的な水利用システムとは別に、「川端(かばた)」と呼ばれる独特の水利用システムが成立していることで知られています。
近代的な水道は
水源→浄水場→上水道→家庭→(使用)→下水道→下水処理場→河川
・・・・という水の流れを持っています。一方、「川端」の場合は
地下水→井戸(自噴あるいは自家用ポンプによる汲み上げ)→坪池→端池→水路→河川(針江大川)→琵琶湖
・・・・という流れ。近代的水道と見比べると気づくのは、水質を変換する施設(浄水場・下水処理場)が存在しないということです。では、水質変換装置無しで水を捨ててしまって大丈夫なのか? かつて日本各地で散々やったように(まだやってる所も多いですが)、生活排水をそのまま川や湖に捨ててしまえば、富栄養化でヘドロどろどろで悪臭ぷんぷんということになるのではないか?
針江では、これをバイオテクノロジー(笑)を利用した設備で解決しているのです。といっても要は、井戸から出てきた水を「壺池」「端池」という二段階で溜めて、「端池」の方に淡水魚を飼っておくというだけなんですけどね。
一つめの画像を見てください。小さい方の水槽が壺池、大きい方が端池です。小さい方ではキュウリとか瓜が冷やされてますね。ここから溢れた水が大きい方に落ちて、さらに集落の中に張り巡らされている水路を伝って出て行きます。
で。大きい方の中には魚影が見えますね。これが鯉です。大抵の川端には鯉が飼われていて、ありとあらゆる人間の食べ残しを片付けてくれるんだそうです。カレーを作った鍋なんかもあっという間にきれいにしてくれるとか。野菜の皮やヘタもそうです。二つ目の画像では鯉のサイズがよくわかりますね。でかいです。
三つ目の画像は集落の中心部を流れている針江大川です。水源は集落そのもので、一つの集落から集まってきた湧水がここに集まっていきなり川になっちゃうんです。それで、針江大川の水質、画像からも何となくわかると思いますが、これが実際に良いんですよ。実は針江集落の湧水は環境省選定の「平成の名水百選」に選ばれているくらいで、どの壺池の水も本当においしいんです。そこから端池にこぼれて、一旦は食べ残しなんかも入ってくるわけですが、前述のバイオテクノロジーで綺麗にしてしまう。鮎なんかも集落内の水路をわんさか泳いでいるくらいですからねえ。
もちろん、このシステムは針江集落の湧水量あってこそ成り立つ側面もあると思います。日本国内の家庭の大半では、上水道を使わざるを得ないですし、上水道を流しっぱなしにするなんてことも、各家庭に魚を入れた水槽を常備するなんてことも不可能です。だから、針江の川端システムは、すごいのだけれども、極めて恵まれた条件でのみ成立するものだというのも事実。
ただですね、町に綺麗な川が流れていて魚がひらひら泳いでいるって情景は、もう一度真剣に復活を検討してみるべき案件ではないか。神田川や石神井川や呑川(いずれも都心部を流れているコンクリート三面バリのドブ川)の惨憺たる現状は何とかならんものか。そう感じるのです。
この記事はもう2回くらい続きます。