何とも情けないニュースを見てしまいました。
大阪府知事が府職員に対し「自分のやり方に文句があるなら,辞めてもらってかまわない」と言い放ってしまったとか。売り言葉に買い言葉ってやつですか?
しかし,これはねえ・・・・自分にはリーダーとしての能力が無いと宣言したも同然なんじゃないかと思いますねえ・・・彼はたしか私と同年齢ですけれども,どうかなあ。大阪府なんて巨大な組織の長たる器は,現時点では無いような気がしてなりません。いや,10人のクルーを束ねる航海カヌーの船長にさえ到底なれないんじゃないか。
いえね,私も高校生の時に,部活動でこういう物言いをして痛い目に遭ったことがありますからね。リーダーたるもの,これだけは絶対に言っちゃいけないという言葉があるとすれば,この府知事の台詞だと思いますよ。
私は個人的には府の職員の中に1名,大嫌いな人物が居りますけれども,それでも府職員の皆さんには同情を禁じ得ませんね。何せこういうリーダーが落下傘で降ってきた上に,無茶苦茶な給与カットをするって話でしょう。公務員は安泰だなんて巷ではいわれてますけど,東京都とか牛久市とか大阪府とか,変な首長が当選したら人気取りのスケープゴートにされてしまいますからねえ。案外,地方公務員というのも苦しい立場にあるのかもしれません。
もう一つ気になるのは,こうやって地方公務員の給与カットが(低所得層の)拍手喝采とともに断行されるロジックとして,「民間企業なら業績悪化で給料が下がるのが当たり前」という,摩訶不思議な論理が横行していることです。私は経営学を専門で学んだことはないですけれども,素人でもこの論理のおかしさはわかります。
そもそも,自治体というのは営利目的で動いてはいけない組織です。税金を使って公共の福祉に奉仕するのが自治体。財政が悪化したとすれば,それは入ってくる税金よりも事業に使うお金が多かったからであって,商売に失敗したからじゃ無いわけです。たしかに「商売に失敗した」ならば,収入が減ってもしょうがないですよ。でも,自治体の支出は予算案を議会が承認しなければ執行出来ないんだし,この場合そういう放漫財政を承認し続けてきたのは大阪府議会議員さんたち。その放漫財政黙認議員を選んだのは大阪府民でしょ。
府財政悪化の最大の責任は府民にあるのであって,予算執行役である府職員に責任を押しつけるのは,お門違いなんじゃないかと私は思います。それこそ財務諸表も読めないような無能な経営者が過大な設備投資をして大赤字を出して,その責任を社員に押しつけているようなもの。敢えていわせてもらえば,「卑怯」なのではないかと。
私が今,心配しているのは,府職員の士気の低下であり,仕事に取り組む上でのロジックの変化です。というのも,今回,府職員は「府財政が悪化すれば責任は府議会や府民ではなく府職員に押しつけられる」ことを学んでしまったからです。とすれば,あなたならどうしますか? 私だったら,もう府の支出は徹底的に絞るように行動しますね。府民からの助成金や補助金や税金減免申請も徹底的に潰す。予算案を組めと言われたら,ありとあらゆる支出を切る。
何しろ,府財政の健全度と自分たちの給料が正比例の関係にあるんですから。何が何でも府財政は悪化させない。それでどれだけ府道がボコボコになろうが,福祉が切り捨てられようが,構っちゃいられないですよ。
賢明な方ならば,もう件のロジックのおかしさに気づかれたと思います。自治体のような非営利団体の職員は,その団体の掲げるミッションをどれだけ実現出来たかで評価されるべきであって,その団体の財務内容の健全度をどれだけ上げたかで評価されるべきでは無いのです。何故ならば,非営利団体とは本来,利潤の最大化ではなく,公共の福祉の最大化を目的として設立されている団体だからです。
ですが,今回,大阪府は「自治体職員の仕事は自治体に赤字を出させないことである」というアホなメッセージを満天下に発信してしまいました。怖いですねえ。生活保護申請の水際撃退が問題になってますが,こういうロジックが日本の自治体のデファクトスタンダードになったら,生活保護受給者の絞り込みはますます進むんじゃないですかね。
増税,そろそろ真剣に検討しませんか?