祈りの方法を知っているだろうか

 多分、あと4時間強でホクレアとアリンガノ・マイスは出航するんだと思います。

 アリンガノ・マイスはヤップ島まで行って、そこでカロリン諸島の伝統的航海術を学ぶ為の練習船になりますし、ホクレアはさらにその先、日本列島を目指します。

 乗り込んでいるのは日本国の隣国であるミクロネシア連邦の人々であり、日系移民がその社会の成り立ちに多大な貢献をしているハワイ諸島の人々。そして私たちの同胞も何人か。

 もしもお時間があれば、ここ日本ででもこの航海の無事と成功を個々に祈りましょう。

 でも、どんな風に? 

 日本列島というのは不思議な土地で、大宗教の殆どが私たちの普段使っている言葉そのままでの祈りを行わないんですね。キリスト教くらいかな、平易で自然な日本語(や日本手話)で祈りを捧げているのは。仏教のお経や真言、念仏、題目などはみな古代の中国語やインドの言葉(が変化したもの)ですし、神道の祝詞は独特の節回しと言葉遣いをする。もちろん、そうした形式がしっくり来るという人も多いからそうなっているのでしょうし、然るべきお経や祝詞を使って祈ることが出来る方は、そうしたら良いと思います。

 ですけれども、そういったある種の「技法」を持ち合わせていない私たちはどうしたら良いのか?

 私が思うところはこうです。荒木汰久治さんがホノルルでしたように、自然な日本語で思うところを申し述べれば良い。だって私たちの母語なんですからね。

 遙か彼方で海に乗りだそうとしている2艘の航海カヌーと1艘のヨットを思いながら、自然な日本語で、その航海の無事と成功を祈りましょう。誰に? 誰にでも良いです。懇意の神様がいらっしゃるならばその方に。特におつきあいのある神様がいらっしゃらないのであれば、あなたの住んでいるその土地の神様に。あるいはあなたの住んでいる土地の前にある海の神様に。

 もちろん私も祈ります。

 ホクレアとアリンガノ・マイス、そしてカマヘレを、無事にそれぞれの目的地へと辿り着かせてください。そしてこの航海を、私たちの未来に価値ある何かを数多く生み出すものとしてください。