中村伊知哉が学長になって、なんか変な大学を作るらしいのですが、ミネルバ大学がネットでバズってからこの手のコンセプトの学校増えてますね。
1.ミネルバは全授業オンライン化。講義を禁止し、反転授業+完全アクティブラーニング。少人数授業。
iUもこれをやりたい。講義禁止、っていう腹のくくり方がいい。
知識はスマホで取ればいい。リアルな授業はディベートと創作。これまでの大学とはガラリと違います。
2.企業・社会が求めるスキルを身につける。
iUもそうします。大学が教えたいことと企業が求めていることのズレをマーケット・インでなくします。
クリティカル思考・クリエイティブ思考・効果的コミュニケーション・効果的インタラクションというミネルバの4汎用スキルは参考になります。
3.テニュア(終身雇用制)なし。
iUもそうします。テニュアは大学教員に競争力と進化インセンティブがない元凶。
むしろいかに自らを競争環境に置くかの設計を重視します。
4.企業との協働、インターン重視。
iUはこれをより押出し、インターン必修の「企業と作る」大学とします。構想そのものを数十の企業とともに設計しており、企業との協働を教育の軸に据えます。
ミネルバ創業者のベン・ネルソン氏は当初、構想が資本家などから拒絶されたそうです。その後、ピーター・ティール氏やラリー・サマーズ氏らの大物に認められて動き出したとのことです。iUは、構想当初から数多くの企業に支持されておりまして、企業からのニーズに合致していると感じています。
iUvsミネルバ大より引用
私には、色々な企業と連携して、産学連携のナニカと企業内インターンシップをメインに、ガチャガチャした教育をやるところ、としか見えません(個人の感想です)。
・ICT教育:電子学園が積み上げた基盤により、プログラミング・AI・ビッグデータなど、幅広いICTスキル教育を展開
・ビジネス創造教育:実務家教員によるビジネススキル教育を実施、学生全員に企業インターンシップで学ぶチャンスを提供バーチャル×国際性:オンライン授業を充実化させるとともに、英語教育の徹底・留学生の受け入れにより国際性も強化
・インターンシップとリアルプロジェクト:1人600時間以上のインターン、実ビジネスの中でハンズオンのリアルプロジェクト教育を実施
教育・カリキュラム概要より引用
いわゆるFラン大学がミネルバっぽいルックスの高校を作るみたいな「インフィニティ国際学院」とかいうのも見かけましたし。
固定したキャンパスが無いというのは、ヨーロッパ中世における大学のはじまりもそうだったし、学生が様々な土地を遍歴するというのも同じく中世の学生の姿に似ています。
逆に、産業界への阿諛追従に全振りする大学というのは新しい。
なんだかんだで企業の多くは自分の得になることしかしないし、わかりやすく得になるか、相手先がスーパーブランド大学(日本なら旧帝大や東京六大学クラス)でもない限りは、なかなか相手にしてくれません。
仮に相手にしてくれたとしても、組織として大学教育への情熱を共有してくれるかというと、その可能性はゼロ%と断言します。教育って面倒くさいですからね。ビジネスの片手間で出来るものではない。仮に出来ると言っていたとしても、実際には「忙しいから」「バタバタで」「そんなことより今期の予算が」「これ誰が言い出したんだ」。
最後は、はてな匿名ダイアリーに告発ブログが投稿されて拡散されてもの笑いのタネになる。いつもの展開。
また、企業は風向き次第で簡単に離れて行きます。担当者が変わったとかそんなレベルでも関係性が変わる。
そんなこんなを考慮すると、この手の、まるで新しいウェブサービスやソシャゲーを作るみたいなノリで立ち上がる大学や高校の大半は、最大限に上手くいったとしてもモンストやパズドラやFGOみたいな立ち位置ではないかなと。
私も自動車の運転はモータースクールNAVI、ギターはマックミュージックスクールというところに通って教えてもらいましたし、ああいうところは払ったお金に対して相応の技術や知識はちゃんと返してくれる。
私としても愛着というものは特に無い。モータースクールNAVIなんてとっくに潰れて無くなってる。マックミュージックスクールではギターの講師は山田さんともうひとりいましたけど、名前ももう出てこない。なんか時任三郎に似てたイメージしかない。
一方、大学や高校というものは学びの共同体ですからね。建学の理念や教育思想があり、伝統があり、卒業生を含めたコミュニティがある。上手く行っている大学や高校はこういう部分が強いです。放送大学だって、あれは相当に強靭な共同体ですよ。
ソシャゲーみたいにして作られたネット時代の高校や大学の経営陣が、学校経営の核となるのは思想でありコミュニティである(だから算盤尽くでしか関係性を作らない企業やネット紳士ネット淑女はそのメンバーたり得ない)ということを理解していれば良いですけど。