立教オケを芸劇で聴く

 去年教えた学生と、今年度のどこかで立教の学生オーケストラを聴きにいくという約束をしていましたので、今日、池袋の芸術劇場大ホールで行われた定期演奏会を聴きに行ってまいりました。

 曲目はボロディンの「イーゴリ公」から「序曲」。
 チャイコフスキーのバレエ「白鳥の湖」から抜粋。
 同じくチャイコフスキーの交響曲1番。

 プログラムに挨拶を書いておられた星野宏美先生(立教の専任教員では唯一人の日本音楽学会会員)も、「だったん人の踊り」じゃなくて序曲、チャイコフスキーも4番以降のメジャー曲じゃなくて1番という選曲を「渋い」と評されていましたが、内部情報によると、団員で投票で決めたらたまたまこうなっちゃっただけだそうで。ロシア大会になったのも偶然だそうです。

 さてその演奏。中規模総合大の学生オケとしてはまずまず、というところでしょうか。そりゃプロと較べればアラは色々ありますが、ともかく破綻無く聴かせてくれました。それよりも私が感じたのは、こういう演奏会が当たり前に開催出来る日本という国は何て素晴らしいんだろうということ。クラシック音楽、特に管弦楽団なんて人件費がアホみたいにかかるものですから、助成金や補助金が無いとそもそもプロとしては成立しないものですけれども、だから助成金補助金が減ってプロの楽団が一つ二つ消えたからクラシック音楽の危機とか文化政策がどうのとか、私は全然思わないんですよ。私も日本音楽学会正会員ですが(笑)

 今日もパンフレット投げ込みで、アマオケの演奏会のチラシがいっぱいありましたけども、今や西洋クラシックの楽しみ方の相当部分を占めているのが、素人さんが習ったり演奏会をしたりという、実演市場だと思うんです。日本の西洋クラシック界はそもそも、素人実演市場が無いと成立しない。一流オケの団員だって素人に教える仕事で生計立ててるんですからね。

 私は、そういう素人市場がこれだけの規模で成立していて、素人さんたちが習ったり演奏したりして楽しんでおられることを、とても幸福で素晴らしいことだと思うのですよ。今日も、私が教えた(教えている)学生が二人出ていましたが、二人とも、普段の彼女らとは別人のように光り輝いて見えた。いつもの倍くらい美人に見えた(も、もちろん普段の彼女らもとてもチャーミングですよ)。ということは、二人ともこのステージを心から楽しんでいたってことなんです。

 その楽しさの価値は多分、ウィーンとかベルリンとかフィラデルフィアとかの超一流プロオケを聴く価値と同じくらいはある。最低でもね。それは音楽の楽しさの核心の一つなんです。そんな機会を、誰でも普通に手に入れられる今の日本ってのは、本当に歴史上稀に見る豊かで平和な空間なんだなあと私は思いました。この子たちには、このままずっと音楽を演奏して楽しんでいって欲しいなあとも思った。就活とか社会人生活とか大変なことはこの先も色々あるんだろうけど、二人とも幸せな人生を送って欲しいなあ・・・としみじみしながら、チャイコフスキーを聴いていたのでした。