一叩きして真価がわかるタイプ

 今日は驚きました。

 来月に実施予定のフィールド撮影実習「都市とコミュニティ」ワーキンググループの企画プレゼンテーションがあったのですが、テーマ設定のセンスが非常によろしかった。何かあまりに鋭かったので、どこでアイデアを拾ったのか問いただしてみたところ、以前に「南山・何でも検証ワークショップ」にも来てくださった鈴木俊治さんの都市設計論の演習でヒントを掴んだとのこと。なるほどねえ。そう来たか。
 
 実はこのワーキンググループが最初に出してきた企画案は、今だから言いますけどもベタ過ぎて救いようが無いダメ企画だったんです。それで、奥多摩合宿の時なんかに焼酎を飲みながら説教した。

「なあ、君ら、その街の由来とか歴史とかちゃんと調べたか?」
「いえ、調べてません」
「そりゃダメだぜ。どんな街だって、まず大元は地質学的な必然性がある。君の住んでる○○だって、武蔵野台地のちょうど背骨の辺りだからそういう地名が付いてるんだぞ。というか武蔵野台地って知ってるか?」
「知りません」
「今目の前に流れてるその川、多摩川ってのはな。何百万年という間には全然違うところに川筋があったこともある。今の荒川が多摩川の流路の北の際だ。南の際が今の流路だ。その間にある台地が武蔵野台地だ。この台地のちょうど背骨んとこを流れているのが玉川上水だ。何故だかわかるか?」
「何でですか?」
「台地の背骨んとこを流しとけば、北にも南にも自然流下で水流して灌漑出来るだろ。」
「あ、なるほど。」
「その玉川上水ってのは江戸時代に作られた。それまで武蔵野台地はたいがいが荒れ地だった。だってそうだろ。多摩川より高いとこにあるんだから、自然流下で灌漑出来ねえ。台地だから大した川も出来ねえ。その台地の東側の際が江戸城やら上野公園やらだ。立教大学がある西池袋だって武蔵野台地だ。その証拠に、ちょっと南に行った目白にはとんでもない激坂がいっぱいある。良いか、どんな街だって自然の地形に逆らっては作れないんだ。街の構造には地質学的な必然性がある。都市社会学者は得てしてそういうとこを見ないもんだが、ある街の成り立ちから理解しようと思ったら、そっから始めなきゃだめだ。」
「ふうむ。」
「それで、君らが出してきた例の企画だが、あれはあのまんまじゃダメだ。何しろ、新しい発見の予感が何もない。○○の○○なんて今まで散々取り上げられてきたネタだろ。そんなわかりきったものを今更みんなで見に行ってどうする?」
「えーと・・・」
「君が就職したとする。それなりに仕事をこなしていって、じゃあ一発、新製品のアイデア出してみろと言われたとしよう。そん時に、既に他の会社が作って売ってるものの完全パクリ企画を出したら、こいつはバカかと思われるだろ。な。まだ誰も作ってないから新しい商品になるんだろ。それと同じだ。新しいもの、誰も気づいてないものを見つけられなかったら、君という人材の価値はどうなる? 君は新しいものを創り出せない人間なのか? 違うだろ?」

 その効果があったのかどうかは謎ですが、ともかく連中が作り直してきた企画は素晴らしかった。これなら面白いものが創れそうだ。皆がそういう予感を持った。

 立教大学の学生は、一度コテンパンに潰された後の逆襲に味があるタイプかと思います。

 それともう一つたまげたこと。ゼミが終わったらおもむろにKさんが音頭を取って、ゼミ生たちによる夏合宿の企画会議が始まったんですわ。「夏合宿やりたかったら君らで自主的に企画しろ」とは伝えてありましたが、実際に企画に取り組むには勢いが必要ですからね。半信半疑というより、8割方夏合宿は無いなと思ってました。ごめん。侮ってた。月曜提出の月例レポートも出来が良いものは本当にケチのつけどころが無いレベルだったし(トップの数名は修士課程の院生が書いたって言っても通用するでしょうね)。

 ・・・・だから、私もついついきつい課題出しちゃうんですけどね。(「ちょっときついかな? でもきっとなんとかこなせるだろうな。」→「うわっ、こんなとこまで来たか! 凄い!!」)