整備に出していたストラトキャスターが戻って参りました。これ、正確には妻のギターなんですが。1989-90年のフェンダー・ジャパンのST62-70で、木部のクオリティは化け物みたいに高いです。私も沢山ギターは触ってきましたけど、この個体の鳴りはトップクラスですね。しかも最初から鳴りが良い個体でした。今、確実にこのクラスのストラトを手に入れようと思ったら30万円はすると思います。だって銀座の山野楽器に行って20万円の値札ぶら下げたピカピカの輸入もんのストラト何本か弾かせてもらって、このギターの半分も鳴る個体ありませんでしたから。
余談ですが、1990年代前半のフェンダー・ジャパンのギターってこのレベルの個体がゴロゴロ落ちていたんですよね。あの時期に触ったフェンダー・ジャパンのストラトは6本くらいありますけど、全部が全部、今の基準なら「大当たり」クラスの鳴りでした。しかもST62-55なんかがそういうレベルだった。
唯一の問題はピックアップね。悪くはないんだけど(嫌いじゃないんで、当時のフェンダー・ジャパンの安いラインに純正装着されていたものを不動のメインギター、フェルナンデスFST-135のセンターに入れてます)、これだって音もしない。それでこのストラトキャスターもシェクターのモンスタートーンとかエヴァンスとかフェンダーのノイズレス・ホットとか色々付けてみたんですけど、今回たまたま職人さんの工房でデッドストックになっていたヴァンザントのBLUESをフロントに付けてもらったら、これが予想を超えた大ヒットでした。歪む直前くらいのゲインでエレクトリック・ブルースを弾いてみたらまさにSRVサウンド。
なんでも、1990年代の半ばにグロスで仕入れたものの最後の一つなんだそうです。ヴァンザントが日本に入ってきた直後のロットですね。ヴァンザントは他のギターにTRUE VINTAGEを付けていて、これはこれでとても良いピックアップだなとは思っていましたが、今回のこれには参りました。もうこのギターのフロントは私が生きている限りはこのピックアップ。
ちなみに今、同じ職人さんの工房のデッドストックのESP・LH200をフロントに入れたHSHレイアウトのサーキットを作って貰ってます。これはムーンのL5というディンキーシェイプのストラト・ボディに乗せる予定です。リアには23年前に買ったダンカンSH-4。奇遇なんですが、今回分けて貰えることになったLH200も23年前に仕入れて、そのまま寝かせてあった個体なんだそうです。
それにしても、私がギターを弾き始めたのが1987年で、当時すでに1970年代初頭に生産されたギターは「オールド」扱いでした。でも引き算すると20年経ってない。今、私の手元にあるギターはといえば、フェルナンデスFST-135が1984年頃だから25年前。フェンダー・ジャパンのストラトが20年前。ムーンのL5も15年以上前。立派なオールド・ギターじゃないですか(笑)。
20年前、30年前には国産ギターはパチもの扱いで、ある意味「使い捨て」でした。でも今日、客観的な目で見ると、アメリカ製の個体よりも優れた個体は沢山あった。全部が全部そうではなかったけれど、10本か20本に1本は「これは!」という凄い個体があった(今、私のところにあるギターも実は「これだけは手放せない」という優秀な個体ばかりでして、いまいちな個体は全て売ったりあげたり捨てたりしてしまったわけです)。最近では「ジャパン・ヴィンテージ」なんて言葉も生まれて、一昔前の国産ギターもきちんと評価されるようになってますけど、当時からそういう認識で丁寧にコンディションを維持されていれば、もっともっと多くの個体が今、お宝として活躍していたのではないかと思います。