ひそかにアイスダンスに燃えた

【注意:航海カヌーとは全く関係無い話題です】

 ようやく2008フィギュアスケート世界選手権の録画を見終わりました。もう5月なんですが、日本では比較的人気の無いペアとアイスダンスは4月の放送ですからねえ。しかも1回の放送が長いですから、少しずつ見ていってこれくらいの時期になってしまうんです(サッカーやロードレースも見なきゃいけないし)。

 2007-2008シーズンを振り返ってみると、やはり端境期という言葉が浮かんできますね。だいたい冬期オリンピックと冬期オリンピックの間のどこかに、こういったシーズンがあるんですよ。混戦状態というのかな。旧世代のチャンピオンたちが居なくなって、次世代のチャンピオン候補生たちがダンゴ状態になっているシーズンね。

 男子シングルで言うと、規格外の宇宙人が育児休業でシーズン全休。ランビエールとジュベールという二人の王者がいずれも病気やケガで不調。チャンピオン候補生筆頭の高橋はシーズンを通してはがんばりましたが、最後の最後で調子が落ちてしまった。ピーキングの失敗。でも良いんですよ、彼は。これも勉強の一つでしょう。彼にはバンクーヴァーで表彰台に立ってもらわないといけないのだから。とはいえ、世界王者になったバトルはまさに神懸かり的名演を見せてくれたし、ウィアーも一皮剥けたシーズンになりました。これで来季、そしてオリンピックシーズンは、プルシェンコ、ランビエール、ジュベールの王者軍団にバトル(今回のあれがまぐれだったのかどうかは来季次第)、高橋、ライザチェク、ウィアーらが挑むという、絶妙の構図が決まりました。非常に楽しみです。

 女子シングルも浅田真央、中野、金、コストナーらが全盛期に入りつつある一方で、アメリカの若手選手たちの台頭もありましたから、復調が待たれる安藤やマイズナー、それに侮りがたいフィンランド勢も交えて、バンクーヴァーまでの構図が決まったシーズンだったと思います。

 私が一番好きなペア競技はというと、これが難しいところですねえ。正直、実力では中国のトップ2が図抜けているのですが、どちらも故障や病気によって実力を出し切れなかったシーズンとなりました。サフチェンコ&ソルコビー組やデューヴ&デヴィソン組の成長は認めるとしても、万全の状態で勝負したら中国の2組にはまだ勝てないでしょう。バンクーヴァーまでにどれだけ上積みがあるか、そしてどれだけ復調してくるかが問題です。つまり・・・今のところ、バンクーヴァーまでの構図はどちらかと言えば後ろ向き。特に過酷な競技なんで故障は仕方ない部分がありますけども・・・。

 さて。今季、最大の収穫はアイスダンスです。アイスダンス。地上波じゃ見られないんでしたっけ? すっげーもったいないですよ、それ。いや本当に、今一番面白いのはアイスダンスですから。旧世代のチャンピオンであるデンコヴァ&スタビスキー組が引退した後はもうベルビン&アゴスト組の天下か~、でもあいつらは上手いけどつまらないんだよな~。

 とか思っていたらですね、いきなりベルビン&アゴスト組は麦わら帽子なんか被っちゃってブルーグラスでオリジナルダンス作ってきてびっくり。一気に芸人魂が宿って面白いチームに変貌しているじゃないですか。ソ連時代から無敵を誇ったロシアも、ナフカ&コストマロフ組引退後はパッとしないから、ついに連勝記録も終わりかと思っていたら、ドムニナ&シャバリン組がついに才能開花でGPファイナルと欧州選手権というビッグタイトルを立て続けに勝ってしまった。しかも勝った相手はベルビン&アゴスト組でありデロベル&ショーンフェルダー組ですからね。まぐれでは勝てません。

 それだけじゃないですよ。ロシアは2番手のホフロワ&ノビツキー組も一気に一流の芸を身につけてきたし、アメリカはアメリカでデイヴィス&ホワイト組、ナバロ&ボメントレ組まで若手3組が世界トップクラスの実力を持っている、突然のアイスダンス大国化。カナダもデュブレイユ&ローゾン組が引退したと思ったら、バーチュー&モイア組が・・・・あのフリープログラム見ましたか? ねえ? 何でも音楽表現で10点中9.5を付けたジャッジが居たとか。

 すごいです。この若手チームの育ちっぷりは。露米加のこの6組は末恐ろしいですよ。だってアイスダンスって30歳くらいで技術と経験と内面と体力のバランスが完成して選手としてのピークを迎えるという、芸術という意味ではフィギュアスケート4種目中、一番奥が深い競技です。なのに、この連中は既に技術面では8割以上は完成しちまっているし、20歳になるかならないかでもう世界の檜舞台の上の方で戦っている。

 もちろん、世界チャンピオンになったデロベル&ショーンフェルダー組は、芸術性という点では若造たちを遙かに凌駕していましたから、結果は順当なものだったと思います。しかし・・・バンクーヴァー、あるいはその次あたりの冬期オリンピックは凄いことになるんじゃないですかね。普通に考えたら、この6組のキャリアのピークは次の次くらいなわけで、それまでにお互い切磋琢磨しあっていったならば、どんな途轍もない演技を見せてくれるのか。伝説のトービル&ディーン組の「ボレロ」を超える世界になるんじゃないのか。

 夢は尽きません。

 今からでも遅くないです。アイスダンスですよアイスダンス。真央ちゃんと安藤と大輔だけチェックして済ますなんて、フィギュアスケートの喜びの8割捨ててると言わせていただきます。