サツキちゃんの嘘つき

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 昨日、一つ仕事が終わったので今日は午前中から自転車で遠出してきました。

 府中街道をひたすら北上し、所沢駅の北で進路を東に向けます。目指すは所沢市松郷。これでピンと来た方はかなりのジブリオタクですね(私は違いますが)。あの「となりのトトロ」で主人公のサツキちゃんが、妹のメイちゃんを探している最中、行き会った若いカップルに「どこから来たのか」と訊かれるのですが、その時にサツキちゃんは「マツゴウです」と答えるんですよ。

 サツキちゃんが向かっていたのは七国山病院。これは東村山市の八国山緑地の南側にある東京白十字病院がモデルと言われています。そこから東に5キロほど行ったところにあるのが所沢市松郷。ここがサツキちゃんの家のある場所なんでないかという説があるのですが、私はこの説を聞いた時、おかしいと思いました。というのも、あの辺りは武蔵野台地の上、しかも何層かになっている関東ローム層の中でも一番層が多いはずですから。思い出してください。サツキちゃんの家の前には小川が流れており、小川に沿った道の反対側には水田が広がっていました。

 あんな土地で水田が作れるはずがない。だから所沢の松郷はサツキちゃんの家があった場所ではない。地形的に考えて、松郷で出来るのは畑作農業だけのはずだ。

 そう考えた私は早速調査に向かう・・・・はずだったのですが、例の大けがで延び延びになってしまい、このたび漸く現地調査が実現したのでした。

 結論から言いますと、やはりサツキちゃんはウソをついてました。松郷の写真を見てください。見事に畑が広がっています。ここはやはりなだらかな丘陵地帯で、水田耕作は100%無理な土地でした。私の知っている範囲で言えば、サツキちゃんの家に一番近い風景があるのは、同じ埼玉県のさいたま市にある「見沼たんぼ」ですね。あとは町田市の小野路とか。昔は多摩川沿いにいくらでもあんな風景はあったんでしょうけどね。

 さて、帰り道に立ち寄った所沢市下安松の和菓子店「奈か里」のご主人に興味深い話も聞けました。地理的にいうとこの下安松というのは、松郷より少しだけ南にあるのですが、東所沢駅のちょっと南で標高が20メートルくらいガーンと下がっています。凄い段差です。比高で言えば多摩川右岸の多摩丘陵と多摩川低地の比高もそれくらい、あるいはそれ以上あるんですが、何せ一気にぶち落ちる感じの崖なんで、迫力が違う。地元では「アカバケ」なんて呼んでいるそうです。赤は関東ローム層の赤土の赤、バケというのは武蔵野で崖をさす「はけ」の濁音でしょう。地形から見て、柳瀬川が削った河岸段丘だと思います。

 さて、「奈か里」のご主人は75歳で、40年前から下安松に住んでおられるそうですが、昔は下安松の辺りは一面が水田だったとのこと。水源はというと、「アカバケ」下から沸く水を利用していたのだそうです。柳瀬川の削った低地では武蔵野台地の中でも水田が作れたんですねえ。

 とはいえ、「アカバケ」の落差や傾斜は、サツキちゃんの家の付近のなだらかな段丘とは桁違いのもの。やはりサツキちゃんの家は所沢市松郷ではなかっただろうというのが、今回の結論でした。