Too Long in Exile

 ポリネシア航海協会とハワイ日本文化センターの声明が示すように、今回の「祝福の旅」は、カラカウア王の日本訪問125周年や官約移民100周年を記念するという意味も持っています。

 ところで「官約移民」ってご存じですか? きっと、今、毎年日本からハワイに渡っている人々の1%もこの言葉を知らないんじゃないかと思います。ググってみれば1発で出ますよ。今回ホクレアが寄港する予定の周防大島にある移民資料館のウェブサイトが出ます。

 あるいは、カラカウア王は何故日本に来たのか?

 これも、殆どの観光客はご存じないと思いますが、カラカウア王は、ハワイがアメリカに侵略されてしまわない為には、日本と強く結びつく事が必要不可欠だと考えていました。結局、当時の日本政府は知ってか知らずかこのアプローチをスルーして、ハワイはアメリカにされてしまうわけですが(日本と結びついた方が幸せになれたかどうかもよくわからない)。

 そして、ハワイに渡った日本人たちは、どのような人生をその後歩んだのか。

 現在でこそ、日系人はハワイにおいて白人に次ぐ富と権力を手に入れていますが、最初はゼロ以下からの出発でした。過酷なサトウキビ畑での労働。太平洋戦争による強制収容。第100歩兵大隊と442歩兵連隊として、米軍中でも突出した死傷率を記録した日系2世青年たちの戦い。

 彼らは、まさに血と肉と骨をアメリカに捧げながら、ハワイの社会を這い上がって行きました。

 その日系人初のハワイ州知事がジョージ・アリヨシ氏で、ホクレア号がエディ・アイカウの死とともに廃船の危機に瀕した時、私財を差し出してこれを支えた人物でもあります。

 おわかりでしょうか。

 今回の航海にハワイ日本文化センターが関わっているということは、一つには、このような日系ハワイ人たちの歴史をもっともっと知って欲しいという希望がある。私はそう思います。

 もちろん、日系ハワイ人たちの歴史とも絡み合いながら、同じように苦しみの近代史を生きてきた先住ハワイ人たちの歴史を体現する船がホクレア号ですから、つまりは「楽園ハワイ」の裏にある、骨が軋むような、今もなお傷跡が残っているような、そんなハワイ史を知って欲しいということでしょう。そして、平和や友愛や繁栄がいかに困難なものなのか*、それを守り受け継いでいくことがいかに大切なのかを再認識して、平和な未来をともに築いていこう。そういうメッセージを私は聞いたような気がします。

 それには何をしたら良いのか。

 本を読みましょう。話を聞かせてもらいましょう。見に行きましょう。考えましょう。

 日系ハワイ人の歴史を綴った本は、読みやすい新書も含めていくつか出ていますし、先住ハワイ人たちの現在を体当たりで取材して書かれた山口智子さんの『反省文:ハワイ』という名著もあります。あるいは、やゑさんが取り組んでおられるように、身近にいるハワイ移民経験者から話を聞かせてもらうのも良い。

http://blogs.yahoo.co.jp/yaef3/folder/95258.html

 これらもまた、ホクレア号を迎える為にしておかなければならない準備だと思います。

* たった60年前、私たちの国は、ハワイが属するアメリカ合衆国と血みどろの戦いを繰り広げていました。現在の私たちの国の平和と繁栄もまた、血で贖われたものです。