立てよ、人文!

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 ホクレア号の日本航海、なかなか正式発表来ないですねえ。実は一度、「今日こそエックスデー」と囁かれる日があったんですが、直前になって「延期になりました」というメールが(鬱)。

 ほとんど性悪女みたいですよナイノアさん(女性差別発言)。

 さて、私、こういう状況下ですが、かなり気になっている集団があります。人文系の学者さんたちです。文学、社会学、哲学、人類学、歴史学、言語学など、パッと見あまり実学的ではないことを研究している人たちね。文学や哲学を研究するのは良いとして、それがどのようにして市民の役にたつのか。そこら辺、近頃では文部科学省あたりも気にしておりまして、だから人文系の研究をする学科や学部がどんどん取りつぶしになっています。なあに、お金を回さなくすれば嫌でも潰れるしかないんで、簡単っすよ人文殺しなんて。

 彼ら人文に寄せられる批判はだいたい次のようなものです。

「世の中の役にたたない道楽学問だ」
「お金を生み出さない虚学だ」
「訓詁学(昔の偉い先生が言ったことを再解釈、再解釈、再解釈という形で果てしなくこねくり回していくやり方)にふけっているだけで、何も新しいことをしていない」
「海外の新しい理論を輸入して紹介しているだけだ」

 私は、かなりの程度、これらの批判が当たっていると思っています。私自身は人文的トリビアを読むの好きですけども、それにしたってあまりにも世間からの「見られ」を気にしていない人文学者が多すぎると思いますよ。これまでは日本の社会が右肩上がりで成長してましたから、そういう所にも「大学の体裁を整える為に」一定の予算は回っていましたけど、これからはそうはいかないだろうと見ています。世間の役に立とうとしない学者は消えていただくしかない。

 もちろん、基礎研究は大事ですから、一見何の役に立つんだかわからなくても、それだけで即死判定をすべきではないとは思います。人類の歴史の多様性や創造性を記録しておくという、つまりユネスコが世界文化遺産の判定に使っているような基準で、「直接カネは生み出さないけど、後で何か使えるかもしれない」ような研究は、やってもらいたい。私たちがこれからどう生きていくべきかをきちんと考え、誰にでもわかるような言葉で語れる哲学者がいれば、それは大事にしたい。

 しかし、現状はそんな健全なもんじゃありません。訓詁学はどの分野でも当たり前だし、社会学や文学を覗くと、イギリスで流行った手法(カルチュラル・スタディーズ、略してカルスタ)やアメリカで流行った手法(ポストコロニアリスム、略してポスコロ)をパクって、そこら辺の適当なネタに当てはめただけのような研究がわんさかある。哲学に目を移せば、フランス現代思想(ポストモダニズム、略してポスモダあるいはポモ)にかぶれて何が言いたいんだか誰にもわからない(きっと書いている本人にもわかっていない)呪文を書き殴る人が沢山います*1。人類学者もそう。だいたい何で日本の人類学者はあれほどまでにバリ島が好きなのか*2。お前らただのバリ島ヲタがアリバイ工作で人類学者やってるだけちゃうか? 

 いやほんと。

 しかしですよ。私思うんですが、どうせこれから日本の大学の1/3は潰れて無くなります。募集定員割れを起こしている大学がうじゃうじゃ出てきているんですからね。その時、真っ先に切られるのは、そういう「世間に対して何の役にも立たない、本人の趣味やアリバイ工作だけでやっている人文学者」ですよ。今いる人文学者(院生も含めて)の9割以上は、今後、人文学者としては食っていけないと思う。

 だったら、そろそろ世間の為に汗を流す練習、しといても良いんじゃないかな。

 私は日本の人文学者に明るい未来はほぼ存在しないと思っていますが、それでも彼らが賢い頭脳や貴重な知識を持っていることに変わりはないとも考えます。それで、そういう方々、せっかくの賢い頭や知識をホクレア号の日本航海支援のために使ってはくれないものか。・・・・・もちろん体とセットでですが。ハワイ研究オセアニア研究日本史研究移民研究その他、ホクレア号に何とな~く関係があるような研究をしておられる人文系の学者、探せば多いんじゃないかと思いますよ。

 立てよ、人文。どうせ君らに未来はないんだし、せめて人文として世の中の役に立ってから、誇りを持って人文学者を廃業しようぜ。な。メタ批評や訓詁学や銅鉄研究ばかりしてたってつまらんぜ。

 以上、もと人文学者より。愛を込めて。

*1 これについては、最近読んだスティーブン・ピンカーの『人間の本性』の20章が面白かったですね。ポモ芸術とポモ人文を徹底的に批判していて、最高でした。ポモは人間の生物学的な造りを否定しているから救いがたいという論旨で、私も殆ど同意します。ポモ人文の文章がどんなものか知りたい方は、ジュディス・バトラーとか椹木野衣(さわらぎ のい)を立ち読みしてみてね。買う必要は一切ありません。

*2 たぶん、ハワイ研究者の100倍くらい。もしかしたら、もっといるかも。どう考えても数多すぎですよ。バリ島に蟻のように群がって寄ってたかって研究することが、どう世間の役に立つんだか、私にゃ全然わからんとです。