現在の計画では、ホクレア号は関門海峡から瀬戸内海、鳴門海峡から紀伊水道を抜けて太平洋側に出ることになっています。そこから清水、横浜、東京(お台場あたりになるんだろうか)、いわき、八戸、函館、白老。ルート上には捕鯨の港の串本や和田浦なんかもありますが、そこはスルー(余談かもしれませんが、ハワイには、日本の捕鯨活動に抗議する為にも、ホクレア号の日本航海を中止すべきだという意見がある)。
ともかく、本州島の日本海側は今回は無しなんですね。
まあ、先方が決めたことですから、しょうがないんですけれども、でも、ちょっと残念でもあります。これまでもご紹介してきたように、本州島の日本海側は古代から近世に至るまで、日本の海上交通のメインルートでしたからね。いわば東名・名神高速みたいなものです。大陸諸国からの文化の窓口でもあり、「潟港文化」があり、北前船があり。
お魚さんだって美味しい。私の母系は越中の大門町、つまり平安期には国府が置かれ、現在では寒鰤の名産地として名高い氷見漁港が有名な辺りの地主だったのですが(妻の父系も何故か越中出身)、祖父はことあるごとに「日本海の魚が一番旨い!」と豪語しておりました。また、私の友人に和田浦出身の男がいるのですが、私が金沢に住んでいた頃には、わざわざ飛行機に乗って魚を食いに来ていました。
そんなわけで、出来ればホクレア号には日本海側の海洋文化とお魚さんも体験していただきたかったのですが、それは次回のお楽しみになりそうです*1。
さて。それはともかくとして、私が推測するに、日本海側にも航海カヌーに憧れる方というのは、必ずやいらっしゃるでしょう。長野や山梨や群馬のような内陸県の方々にだって、宮崎や佐賀だって、ホクレア号来航という意義深いイベントを一緒に経験して欲しい。
日本中をホクレア号と繋ぐわけです。
しかし、どうやって繋いでいけば良いのか?
私はその基本を「贈与」に置いていくべきだと考えています。ブラッド・クーパーさんは、こうおっしゃいました。
「私はいつも、(カメハメハ校の)子供たちに、ホクレア号に寄付しようよと言っています。何故ならば、そうすることで、子供たちはホクレア号と繋がっていくことが出来るからです。」
贈与経済の効用についてはこの記事で詳しく説明しましたね。
贈り物交換では、双方の贈ったもの・貰ったものが「お金」という共通尺度で価値を測られませんから、どっちが得をしたとか損をしたとかいう話にならない。例えば私は毎年、誕生日に妻からプレゼントを貰っています(ダンカンのピックアップとかブッダ・ワウとか)。そして妻の誕生日にはプレゼントを贈っている。どっちもお金の出所は同じだから、自分で買えば良いと思いがちですが、敢えて他人から貰うことで、そのプレゼントには「○○から貰った」という属性が追加されます。これはお金で買えません。
ダンカン・リトルJB:9000円
ヴェトナム製のシルクのアオザイ:10000円
ブッダ・ワウ:20000円
本ツゲの手作りの櫛:21000円
夫婦の想い出:Priceless
お金で買えない価値がある。買えるものはMasterCardで。
・・・・・すいません、ほとんどVISAカードで買ってしまいました。
いや、ともかくそんなわけで、ホクレア号が寄らない土地の方々も、ホクレア号に贈り物をすれば、それでホクレア号と繋がっていける。それだけじゃありません。例えば東京の人が富山の人に贈り物をして、富山の人は高知の人に贈り物をして、高知の人は函館の人に贈り物をして、函館の人はホクレア号に贈り物をする。
すると、東京と富山と高知と函館とホクレア号が一つに繋がる。さらに、もっともっと贈り物の環を拡げて行けば、日本中がホクレア号と繋がるではありませんか。
具体的にどうやって贈り物を交換していくのかは、みんなでじっくり考えていけば良いでしょう。一番単純なのは寄付をすることですけれども、他にも例えば、ホクレア号の寄港地に住んでいる、別の土地から移ってきた人たちが、それぞれの出身地と手を組んで、ホクレア号に贈り物を持っていくというのはどうですか。私の家なら富山ですから、富山のホクレア号ファンと一緒に、「立山」の大吟醸でも取り寄せて、エディ・アイカウにお供えしに行くとか。みんなで故郷の料理を作って差し入れするとか(そうすればホクレア号のスタッフの食費が浮きますがな)*2。あるいはホクレア号来航に合わせて日本海側をヨットかなにかでリレーしつつ、各地から寄せられた贈り物を届けに行くとか。
もちろん、ホクレア号が寄港しない土地から、ホクレア号の歓迎イベントに参加する為に出てきていただいたって良い。
いかがでしょうか。ちょっと面白いと思いませんか?
*1 私、個人的にはビッグアイランドのヒロを母港とするホクアラカイ号こそ、次に日本を訪れるに相応しい航海カヌーではないかと考えています。ヒロの町は特に日系移民が多かったですからね。
*2 こうすることで、自分自身の来し方をあらためて実感し、父祖の土地の魅力を再発見していくことも出来るでしょう。