私たちに出来る事(第1回「金持ちA様、貧乏B様」)

 こうやって日々、ホクレアとそれに関連する(あるいは強引に結びつける)ネタを日々垂れ流しているこのウェブログですが、基本的にはホクレアの日本来航をサポートするというのが主旨になっています。本当です。

 それではホクレアの日本来航をサポートしたい人に出来る具体的な事って何なのでしょうか。

 これから、そういった事もちょっとずつ考えていきたいと思います。もちろんこれは私の個人的な思考なので、こうしなきゃいかんとかいう主張は一切ありません。ただ、何が出来るかを色々考えていく中で、問題点、課題というものも見えて来るのではないかという事ですね。

 第1回はまず全体の状況を俯瞰してみたいと思います。要するに今どうなっとるのか。現状で判っている事は

・ポリネシア航海協会は日本へ来たいという希望を持っている
・ナイノア・トンプソン氏はホクレアの日本航海の位置づけを日本でも議論して欲しいと考えている(らしい)
・日本ではTarzan編集部と内田正洋さんが主にこれをサポートしている
・アウトリガー・カヌー・クラブ・ジャパンも何か関係しているらしい

このくらいでしょうか。殆ど何も始まっていないも同然ですね。具体的な話が何もない。ですが、Tarzan別冊は相当に売れたようですし、そろそろもう少し具体的に考えていっても良い時期かな、と思います。

じゃあ何を考えなければならんのか。今、何が最大の課題なのか。あるいは何が問題なのか。

 これはあくまでも私見ですが、事業の遂行主体が存在していないのが最大の問題点だと思います。もちろんポリネシア航海協会というのがハワイにはあってホクレアの運行そのものはきっちりやれますけれども、それは海の上だけのお話。ホクレアは日本の港に碇を降ろして日本の住人と交流しに来るんだから、日本の土の上を仕切るのはポリネシア航海協会では有り得ない。ポリネシア航海協会のカウンターパートが日本の陸の上に無いと。そういったものがあれば、そこを起点として国内各方面への働きかけ等も出来ますよね。

しかし、そのカウンターパートとやらはどうしたら日本国内に出現するのか? 

 まずはそこから論を進めてみましょう。最初に出てくる選択肢はこれ。

1:既存の組織(自治体や法人、団体)が中心となる
2:新しくホクレアをサポートする組織が出来る

 それぞれのメリット、デメリットは何でしょうか。まず1は何と言っても既に出来上がっている組織が動くわけで、人集めをする必要が無い。法人の場合はその種類によってまた色々と違いがありますね。単純に言えばナントカ財団とかナントカ株式会社の場合は、資金力が違う。ホクレア号ご一行さまのアゴアシ宿と一揃いビタッと揃えて提供出来ることでしょう。この辺がメリット。

 デメリットとしては、まあ単純に言って一般市民との距離感が遠くなるってことでしょうか。特に法人系はね。ナントカ株式会社にしろ、ナントカ株式会社のお抱え財団(トヨタのトヨタ財団とか松下の松下国際財団とか)にしろ、海外のスーパースターを招聘して公演をやって、ちょっとはファンとの交流イベントもやって、偉い人を集めてシンポジウムとかも開いて、テレビで丸抱えドキュメンタリー番組作ってもらって(ナレーションは山口智子さんかもしれない)、最後はビジネスクラスでお帰りいただく。ホテルは京王プラザとかハイアット・リージェンシーとか、そんな感じ。

 当たり前だけどクラブクロウ・セイルにはスポンサーロゴが入る。ホクレアやクルーを使ったケータイやらノートパソコンのポスターが刷られて渋谷駅構内にズラ~っと並ぶ。日文研あたりの偉い先生が何故か呼ばれてナイノア・トンプソンと対談したりする。いや、もしかしたら『バカの壁』の先生かもしれないし『声に出して読みたい日本語』の先生かもしれない。ナンバ歩きの人かもね。後藤明さんや片山一道さんが呼ばれる事って無いだろうな。

 ナイノアさんはSMAP×SMAPに呼ばれるのか、はたまた徹子の部屋か。

 何だか一大イベントにはなるだろうけど、私たちはテレビや雑誌を通して、あるいは関係者以外立ち入り禁止のロープの外から、ホクレアを見ることになるんじゃないかな。ホクレアのクルーと最初に握手するのは県知事や府知事や都知事で。そのままクルーは豪華晩餐会に拉致られて。そういう感じ。

 ともかくいっぱいお金を使ってお呼びするんだったら、ホクレアでそれ以上のお金を稼ぐ。当たり前だけどそうなる。まあ一言でいえばあれです。もうすぐ愛知ではじまるあれ。万博。あれと同じことになります。我々は必ずお金を媒介としてホクレアと関わる事になる。というかそれ以外の関わり方は無い。ホクレアと関わりたかったらお金払ってちょうだいね。

 そうじゃない既存の組織ももちろんある。あるけれどそういう所はお金が無い。お金がない組織が大きなイベントをやる場合には、お金を集めて来ないといけないので、あちらの財団からいくら、こっちの企業からこんだけと、スポンサー集めに走り回る。だいたい半年か1年くらい前から準備に入って、3ヶ月くらい前から大騒ぎになって、1ヶ月前からは毎日徹夜みたいな感じかな。いっぱいボランティア集めてね。日本で国際学会とかやってるの後ろから見ると、だいたいそういう騒ぎですね。学生も院生も有無を言わさずコキつかわれる。

 なんだ。それじゃあ新しく組織作るのとあんまし変わらないじゃない。

 そう、問題は実は「既存の組織か、新しい組織か」ではなくて、「お金持ってる組織か、お金の無い組織か」なんだと思います。お金の無い組織が呼んだ場合は、港に集まるのは海好きだったり、それ以外のルートでもとにかくホクレアや航海カヌー文化について知る機会があって、そのスピリットに共鳴して集まってくる人たちだけになるだろうし、これまでのホクレアの航海と同じように、入港する前からカヤックだのヨットだのがホクレアの周りを一緒に走りながら、クルーに冷えた缶ビールを差し入れするような感じになるんじゃないでしょうか。

 テレビ露出も殆ど無いだろうし、雑誌媒体だってTarzanとサーフィン系、カヌー系の雑誌くらいが採り上げるだけになるんでしょう。お泊まりも豪華シティホテルは難しいでしょう。山口智子さんはきっとやって来るでしょうけど、モーニング娘。だのジャニーズのタレントだのが「関係者以外立ち入り禁止」の向こう側でウロウロする事は無いはずです。

 さあ、どっちになるのか。
 最終的に選ぶのはもちろんポリネシア航海協会でしょうけど、私個人ははっきり言って「お金のない組織」に呼んで欲しいですね。投票コーナーでも「手伝いたい」「差し入れを持っていく」って人の方が断然多いわけですし、私だってその中の一人です。なんだったらクルーの一人二人はうちに泊めても良い。車が必要ならうちの車を使ってくれて良い。入国管理局と折衝して来いと言われればするし、書類を日本語に翻訳して欲しいならさっさとメールで送ってこいと言いたい。その替わり、是非ともホクレアのクルーには、日本の学校に行って、子供達に航海の話やエディ・アイカウの話をして欲しい。それ以外は別に見返りはいらないです。

 みなさんはどう思われますか? 「お金持ってる組織」か「お金のない組織」か。

 次回は「お金のない組織」が呼ぶ場合、その組織はいかにして発生しうるのかについて考えてみたいと思います。だって「お金持ってる組織」が呼ぶんだったら我々は「お金持ってる組織」が呼んだホクレアの消費者になるだけですからね。私たちのやることは、財布からお金だして商品を買うだけ。このウェブログで考える必要も無いでしょう。

==
main page「ホクレア号を巡る沢山のお話を」
http://www.geocities.jp/hokulea2006/index.html