エブリスタでちまちまと書き進めている異世界近世リアル政治経済小説(他に形容のしようが無い)「兵站貴族」。
第10章に入りました。そろそろ9万字。
第10章「商人の王」では、大陸最大の豪商という触れ込みでランザイカ家という商人が登場しています。
モデルとしているのは南ドイツを根拠地として16世紀に莫大な資金を動かしていたカトリックの豪商フッガー家です。
フッガー家は絶頂期には純資産で金貨500万枚(おそらくドゥカート)という、ヨーロッパの大国の年間収入に匹敵するような額の資産を持っていた、超巨大財閥でした。例えばフェリペ2世の頃のスペイン王国の年間収入が540万ドゥカート前後。
ですが、フッガー家がこうした地位にあったのは100年間にも満たない期間です。そして、この絶頂期のわずか5年後には、当主アントーンは会社を清算して引退することを本気で考えていたとも言われます。
その理由は、巨大財閥を次に託すべき後継者の不在、そしてフッガー家の王侯貴族たちへの融資が結果的にドイツ国内の宗教戦争を続けさせることになっている現状への困惑でした。結果としてはアントーンは長年の付き合いであった神聖ローマ皇帝カルロス1世/カール5世との取引を切ることが出来ず、ハプスブルグ家と心中する形で家運は衰えていきます。アントーンの死後もフッガー家は事業を継続し、充分な成功を収めますが、1657年にチロルの鉱山操業権の期限が切れると、フッガー家は事業を清算して会社を解散しました。子孫はドイツの貴族として現在まで血統を残しています。
フッガー家の絶頂期に当主であったアントーンは、ヨーロッパ最大の富豪でありながらも、おそらくは心労の絶えない人生であったはずで、一度は引退と会社の解散を決意しながらも老皇帝を切り捨てられずにズルズル行ってしまったところなど、カワイイとさえ思えます。
私の小説でも、巨大財閥の当主を単純な金の亡者としては描かずに、複雑な陰影を持った人物として描くつもりです。
本文を3000文字書くのに研究論文を1本読む、くらいのペースで資料が必要になるので、資料整理はどえりゃあ大変です。
こんな感じでonenoteにまとめています。