今回はちょっと気分が悪い話題です。
ホクレアをはじめとするハワイの航海カヌー文化復興は、先日のホクアラカイ進水で今や遠洋航海カヌー5艘(ホクレア、ハヴァイロア、マカリイ、イオセパ、ホクアラカイ)、小型航海カヌー2艘(エアラ、モオレレ)と、現役の船だけでも7艘という大艦隊になったのですが、これが四方八方から全て喜ばれているといえば、そうではありません。
これら航海カヌー文化復興運動を、先住ハワイアンの排外的ナショナリズムの象徴と曲解して攻撃する人も居ないことはない。有名なのがこのサイトです(文末参照)。
このサイトはベン・フィニーの「Sailing in the wake of Ancestors」の書評まがいの文章を載せているのですが、もうタイトルからして面白いです。
「『ポリネシア』の航海術:政治問題、民族の支配、そして血塗られたナショナリズム」
内容もまあこの手のウェブサイトではお約束の捏造と意図的曲解のオンパレードで、いちいち指摘するのもバカバカしいのですが、例えば「フィニーによれば、彼のように先住ハワイアンの血を引いていない者は、カヌーの上ではパドリングや帆の上げ下ろし、デッキ掃除しかやらせてもらえない二等船員扱いであり、船長や舵取りを任される事は無いのである。」とあります。
・・・・・すいません、ホクレアはパドリングなんかしない(重すぎてパドリングでは動かない)し、船内の掃除についての記述なんかどこにも無いんですけど?
というかフィニーの本では、1978年にそういう「純ハワイアン」体制で挑んで失敗した経験から、1980年以降は広く門戸を開くに至った経緯もちゃんと書いてあるし、マイロンの死について述べた所でも、ポリネシア航海協会がいかにして排外的ナショナリズムを廃して来たかがもう一度説明されている。
どこにでもこの手のバカはいるもんですね。
さらに始末に負えないのは、ホクレアの日本航海計画そのものも「ハワイは先住ハワイアンのものであるというイメージを日本に広める為」「ホクレアを裏で操っている急進的ハワイアン活動家たちはカラカウア王が明治天皇に表明した婚姻関係の申し込みは今も有効と考えており、ホクレアの日本航海は先住ハワイアンによるハワイ独立運動に日本の支援を取り付ける為」とか妄想全開な解釈を書き散らかしている点です。
そんなんだったら、わざわざナイノアさんが日本に来て、ホクレアの日本航海の意味を考えて欲しいなんて頼まないでしょうに。
最後のまとめも「この本はホクレアを先住ハワイアンの象徴として人々に擦り込む陰謀の一環なのだ」とか書いてあるし。先日紹介したファインバーグ教授の書評では「先住ハワイアンの活動家にしてみたら、あまりに中立的で物足りないだろう」とありました。私もファインバーグ教授の意見n賛成ですね。
このようなねじ曲がった精神構造の持ち主がごく少数派であると同時に、テロに訴える程どうしようもないバカではない事を願っております。ヤレヤレ。