サフィア・ミニー『NAKED FASHIONーファッションで世界を変えるー』(フェアトレードカンパニー、2012)を読了。
エシカルファッションについての本。
と言って解る方は少ないでしょうねえ。エシカル(ethical:倫理的)というのは、ここ数年で出て来た消費に関する概念で、私なりに噛み砕いて簡単に言うと「利益の為なら法律の範囲内で何をやってもOKというのではなく、バリューチェーンに関わる人全てが公正に扱われるようなビジネスのやり方」ってことですね。
まだ難しいか。
消費というのは、法人ではなく個人がお金と引き替えに商品を手に入れて、それを仕事ではなく私用のために使うことです。ポイントは「お金と引き替え」「プライベートで使う」の2点。例えば共有地に生えてるリンゴをもいできて食ったというのは、カネ払って手に入れていないから消費ではないです。スーパーでカネ払って個人がリンゴを買ってきたとしても、それを煮てジャムにして利益載せて売ったらそれは「消費」ではなく「仕入れ」です。
お金と引き替えにというのは、「カネさえ出せば誰でも手に入れられる」、つまり売り手と買い手が地縁血縁その他の人脈で結びついていない、自由な市場での取引であるってことを担保します。
個人が私用で使うというのは、そのモノがそこでモノとしての使用価値を失う、つまり商品としての最終フェイズということを意味します。消費社会論のゼミの若者たちそこ理解してるだろうね? 優奈に晴子、そこ大丈夫か?
さてその消費が商品としてのモノの流れの末端、エンド・オブ・ザ・ロードであるとしたら、当然始発駅も途中駅もある。原料調達、精製、一次加工、二次加工、組み立て、梱包、輸送、保管などなど。そういうところで酷い目に遭っている人がいないようにしましょう、というのがエシカル消費です。
いや、去年指導した卒論難民の一人がこれで卒論書いたから私も知ったんですけどね(例の夏ボ全額両親仕送りの子ですよ)。
さてこの本は「ピープル・ツリー」というブランドの活動を中心に、同じような志を持って活動している方々のインタビューをコラム形式で入れ込んだもので、特にバングラデシュの搾取労働の酷さについてなかなか鬱なレポートも入っています。こういうの読むと、そりゃあ消費者としてはそういう商品は買いたくないし、事業者としてはそういう商品を仕入れたり作って売ったりしたくはない。
そこまではみんな同意出来ます。問題はその先ですね。
商品のサプライチェーンの全工程をチェックして、強制的児童労働や搾取労働が入り込んでいないようにするというのは、私みたいな零細商店が独力でやろうとしても無理なんですよ。コストがかかりすぎる。ZARAやGAPやFRなら出来るでしょうけどもね。
だからもちろん調べてみたんです。児童労働や搾取労働ではないという国際認証があれば、そりゃそういう工場に発注出したいもん。でも、無かったんだな。SA8000というのはあったけど、これはどちらかというと流通分野の巨大企業が受ける認証であって、個々の工場が取れるようなもんではない。
育児バッグも今月中旬にはいよいよ2回目の試作品発注で、その先には量産という段階も待っているんですが、何か工夫して、嫌なとこで作った商品じゃないんですよということはお客様にお知らせしたいと思った次第です。