後藤さん、西岡さん、内田さん、西村さんの新企画

 後藤明さん、西岡正三さん、内田正洋さん、西村一広さんが新しくホクレア関連のウェブログを作られたようです。ついさっき知ったのですが。

 こちらが後藤さんのミッション・ステートメント(のようなもの)。

ホクレア号2007年日本航海のスピリット継承を願う人の集い | ホクレア号2007年日本航海記念シンポジウム第2ラウンド
2007年日本に来航したホクレア号はわれわれに多くの感動を残しました。とくに7月29日東京海洋大学で行われた記念シンポジウムには各界、各階層の人々が多く...

 7月にはまた後藤さんの呼びかけでシンポジウムもやるみたいですね。

 有意義な活動をしていただければ良いなと思います。が、2月13日現在で荒木汰久治さんのウェブサイトへのリンクが存在していない(内野さんと西岡さんと西村さんのウェブログにはリンクがありますが)のは、相変わらずだなあというか。

 後藤さんのミッション・ステートメントには次のような文言があります。

「このブログがホクレア号日本航海の遺産継承のための諸活動やプロジェクトの連絡・情宣・提案、さらにそれへの問い合わせ、参加希望、コメントなどを自由に交換する、カフェバー的場になることを期待します。(後藤 明=sharkcaller)」

 このコンセプトで荒木さんや海人丸へのリンクが無いのは、敢えてはっきり言わせてもらいますが、「看板に偽りあり」でしょう。「ホクレア日本航海のアーカイブス作成(図録作り)」でも荒木さんの存在が抹殺されちゃうのでしょうか。ここは後藤さんの研究者としての良心に期待しておきましょう。

 私は最近、非営利組織の経営論の本を集中的に読んでいます。非営利組織というのは、儲けを出すことではなく社会貢献することを第一の目標にした組織です。さて、社会貢献を最大の目標にすることで、非営利組織は営利企業には無いメリットを享受出来ます。ボランタリーセクターの資源が活用出来る、つまり「ボランティアによる労働力の提供」や「市場価格より有利な価格での資材の提供」など、組織の掲げるミッションに共感した支援者からの援助です。

 しかしその一方で、こうしたメリットの代償もあります。非営利組織のリーダーは私情ではなく大義を最優先しなければならない。掲げたミッションの実現に最適な行動を選択しなければ、支援者からの援助は得られないということですね。この例で言えば、ホクレアの日本航海の遺産継承を目指すというミッションがありますが、それに対して最適な行動をしていれば、このミッション・ステートメントに共感した人からの支援が集まる。ですけれども、その行動は最適ではないと判断する人が増えれば、支援は減る。

 もしもこの方々が荒木さんを排除してしまうのであれば、この運動への支援は私は出来ないですねえ。横浜でのシンポジウムに出ていただいた仁義に反しますもの。それに、ポリネシア航海協会は彼らのウェブログで言っていましたよ「日本語でホクレアの見学会の説明をやれるのは荒木だけだ。荒木の肉体的限界がホクレアの受け入れられる見学者の数的限界を規定する」と。そんな人を「居なかったこと」にしてしまうのは、人の道に外れてます。だいたい荒木さんも海洋大のシンポジウム出ていたじゃないですか。

 たしかに、後藤さんがミッション・ステートメントに掲げておられるような場はあっても良いと思います。ですが、いきなり日本人クルーの一人があたかも存在しなかったかのような顔でスタートしてしまって、それで本当に日本中のホクレア・サポーターの支持が得られるのでしょうか? というか、それってホクレアの掲げた価値観に根本的に反した姿勢じゃないですか?

 これは経営学的に言うと、ガバナンスへの配慮が薄い状況のように感じられてなりません。ガバナンスというのは、簡単に言えば、事業体が本来の事業目的(収益事業や社会貢献)に向けて適切に運営されているかどうかをチェックする機能のことです。例えばあるNPOが「里山の自然環境を保護・回復する」というミッションを掲げているのに、そのNPOのリーダーが個人的にカエルが嫌いなので、カエルの生育環境保全だけは恣意的に避けているというような状況が発生したならば、そのNPOはガバナンスに問題があるとなります。

 株式会社のような営利企業ならば、経営者が自分の個人的好き嫌いを優先させて利益の最大化を怠っている時には株主からの修正圧力がかかります(株主代表訴訟というのがあるし)。ところが任意団体や特定非営利活動法人のようなNPOの場合、財務指標のように誰でも数字で把握出来る目安が無いですから、ミッションに対して最適化された活動を行っているかどうかは、曖昧にならざるを得ないんですね。

 ですから、経営学ではNPOの弱点はガバナンスだとはっきり指摘されています。

「(NPO形態のソーシャル・ベンチャーでは)経営者である社会起業家が、社会貢献という大義名分を前面に押し出して強力なリーダーシップを発揮しているような場合、少なくともミッションに賛同して集まっている人々が、疾走する経営者をコントロールすることは非常に難しいだろう。ガバナンスを受ける対象であることを説こうにも、その行為自体が、あたかも社会貢献を阻害するかのように受け取られかねない。

(中略)

NPO形態のソーシャル・ベンチャーにおいては、ガバナンス構造の脆弱性がネックとなる。社会起業家はこの点を十分に認識し、組織が社会貢献目的に向けて最適化されているか、あるいは、より根源的に、社会貢献目的そのものが現実離れしたものになっていないかを自問自答する。そのためには、自問自答の機会をビルトインした組織オペレーションを組み立てる必要があるだろう。」(神座保彦『概論ソーシャル・ベンチャー』ファーストプレス、2006年、131ページ)

 そして、ガバナンス問題の唯一の解決策は、風通しを良くすること、可能な限り全てを公開すること、これに尽きるというのも様々な経営学者が指摘する結論です。つまり規約を作って公開したり、お金の流れをきちんと示したりということですね。不明朗な部分は中長期的には確実にアキレス腱となるでしょう。

 うっかりリンクを張り忘れただけだった、というのを切に願います。