そんな感じで入港するはずですが

 ポリネシア航海協会の正式なクルー育成教本は、実はウェブに公開されています。

 基本は英語で、ハワイ語もたまに併用されているものです。これがなかなか面白いんですよ。そりゃもうスター・ナヴィゲーションの基礎理論からクルー心得から航海前チェックシートから、文字に書いておけることに限れば、ありとあらゆることがここには書きこまれていますからね。それを眺めているだけで楽しい。

 今日は、そんな中からこの章をご紹介してみたいと思います。

”Notes on Canoe Protocol”(典礼について)
http://www.honolulu.hawaii.edu/hawaiian/voyaging/files/t08-cultural/t08-01_protocol.html

 要するに航海の最中に行うべき儀式についての指示書ですね。ポリネシア航海協会の航海カヌーの航海は、儀式については次のような流れで進みます。

1:出航の儀式(出航の祈り:1998年制定)
2:入港の儀式(カヌーのハカ詠唱)
3:贈り物の贈呈(ハワイから持参した物品を寄港地に贈呈)
4:共有(歌、踊り、物語、操船技術、航法術などを寄港地の人々に伝えること)
5:敬意(クルーはポリネシア航海協会の代表としての自覚を常に持ち、寄港地の社会に建設的な寄与を行うこと)
6:出航(出航前に寄港地を清掃し、感謝の意を伝えること。また帰港後には手紙や写真を送ること)
7:帰港の儀式(帰港のハカ詠唱)
8:ルアウ(ルアウによってクルーは真に故郷の土地及び家族に迎え入れられる)

 なるほどね。ホクレアが1980年にタヒチから帰った時、バッファロー・ケアウラナ氏やブギー・カラマ氏がルアウを開催したのにも、そんな深い意味があったんですね。これはうかつだった。訳注に入れておけば良かった。

 さて、ところでこの手順を読んでいて、一つ非常に気になったところがありました、手順2。入港の儀式のところです。ざっと訳してみますよ。

「航海カヌーが来訪を告げると、岸辺に集まった人々はそのカヌーの素性を訪ねる。この問いに対する正式な回答は、チャントの奏上によってなされる。このカヌーは誰のものであり、どこの土地からやってきたのかを、チャントによって申し述べるのである。」

 多分、これまで彼らが立ち寄ってきたポリネシアの土地では、概ねこういった手順は成立していたんだと思います。あくまでも推測ですけどね。で、どうでしょうかね。糸満に熊本、長崎、福岡、山口、宇和島、横浜。ホクレアの寄港地たる幸運に恵まれた土地のみなさん、ここは一つ、彼らに自慢の「ホクレア・ハカ」を披露するチャンスを与えてみては?