民博版の図録の目次です。
・ごあいさつ
・地図
第1部「オセアニアの航海術」(合計14ページ)
・オセアニア航海術の伝統と現在(須藤健一)
・コラム:クラ交易(小林繁樹)
・ミクロネシアの伝統的航海術(秋道智弥)
・現代に生きる伝統、ホクレア号の航跡と未来(内田正洋)
第2部「海の人類大移動」(合計24ページ)
・大海原への植民:考古学から見たオセアニア文化(印東道子)
・オーストロネシア語族の広がり:言語学から見たオセアニア文化(菊池律子)
・植物の移動経路をたどる:植物学から見たオセアニア文化(ピーター・マシウス)
・コラム:パンダナス(印東道子)
・小さな島々の巨人たち:自然人類学から見たオセアニア文化(片山一道)
図版「オークランド博物館、国立民族学博物館資料から」(合計14ページ)
第3部「島々の暮らしと現代の移動」(合計46ページ)
・ミクロネシアの伝統的交易(印東道子)
・東南アジア、海洋民たちの国境交易(小野林太郎)
・オセアニアを出で行く人びとと出で来る人びと:現代の出稼ぎと観光(石森秀三)
・パプアニューギニアの「人喰い旅行」(豊田由貴夫)
・「楽園」と「未開」の狭間で:ヴァヌアツ共和国、アネイチュム島の観光(福井栄二郎)
・タヒチのタトゥー(桑原牧子)
・コラム:ポリネシアのタトゥー(桑原牧子)
・イースター島の光と影(槇原美紀)
・コラム:モアイ(槇原美紀)
・マダガスカルのハープ奏者(飯田卓)
参考文献(合計1ページ)
ページ数を見ていただくと解りますが、航海術を取り上げた章がやたらと短いですし、逆に(印東さんの文章を除くと)リモート・オセアニアの航海カヌー文化と関係無い文章が並ぶ3部がやたらに長い。私だったらこういう編集はしませんねえ。失礼ですが小野さん以降の文章は全体の1/4か1/5で良いと思います。
逆に私だったらまずミクロネシアの航海カヌー文化の現在を林和代さんに書いてもらいますし、ヤップの航海カヌーの話を拓海さんに頼みますね。それからモダン・ハワイアン・ウェイファインディングの歴史と概要を解説する章が絶対に欲しい。これは内野加奈子さんにお願いすれば良いでしょう。
それから、今回は翻訳者に支払うコストをカットするためだと思いますけども、日本語話者以外の書き手が一人も居ない。これがこの奇妙な執筆者のバランスの理由ではないかと勘ぐってしまう私ですが(言い方は悪いですが、仲間内でオセアニアについて書いてもらえる人を無理矢理集めたような印象です)、展観であれだけタウマコの話が出ているんだから、タウマコについての文章は必須でしょう。ミミ姐にタウマコの航海術についての文章を頼んで私が翻訳すれば良いと思います。だって、展観のメインテーマは航海。航海なんですから。もっと航海について書くべきなんですよ。
それと・・・・図版部分、つまり展示物の写真集や海上の航海カヌーの写真ですが、「解像度が低い!!!」。あんまし綺麗じゃないんすよ。もうね、あんまり文句ばかり言いたく無いんですけど、折角のカラー写真なのに粒子が気になるレベルの印刷なんです。週刊誌のグラビアくらいの解像度しか無い。例のTarzan別冊と見比べてみると、はっきり解ります。他にも手持ちの美術館や博物館の特別展カタログを幾つか出してきて見てみましたけど、露骨に違う。同じ国立の東京国立博物館で今年やった「マーオリ:楽園の神々」展の図録と較べてもやはり明確に安い印刷です。
もちろんこの展観を呼んでくれた民博には本当に感謝しているんですが・・・・予算無かったんですかねえ・・・民博の皆さんも忸怩たる思いを持ちながらの展観であると信じます。