横浜シンポジウム報告5・石川直樹さん

 石川直樹さんは順番で言うと3番目、チャド・バイバイヤン船長と林和代さんの次に登壇されました。石川さんは写真家でもあるので、ご自身で撮影された写真を豊富に使ってのお話し。

 私が石川さんにお願いしたのは、「ヤポネシア」という言葉のイメージをもう少し解りやすくしてくれればということでした。ホクレアの日本航海を巡ってはこの言葉をキーワードとして使う方も何人かいらっしゃったのですが、私にはどうにもこの言葉を使う意味が解らなかったんですね。響きが面白いとか格好いいとか「ポリネシア」に似ているとか、それ以上に何か建設的な意味があるんだろうかと。

 そこで、石川さんなりの理解で「ヤポネシア」という言葉について私たちに教えてくれと頼んだわけです。

 石川さんはまず南西諸島の写真を次々に見せてくださいました。お祭りや聖地に特に拘っていると石川さんはおっしゃっていましたが。それらの写真に続けて東南アジア島嶼部のお祭りや聖地の写真。するとこれが確かにそっくりなんですね。適当に入れ替えてもバレないくらいに似ている。面白い。

 続いて石川さんは北海道の写真とアラスカの写真を。これも似ている。う~む、そう来たか。こうしてまず石川さんは、日本列島が南の方から北の方へと緩やかに変化しながらも連続的に続いていっている文化の存在を視覚的に見せてくれました。その上で、半島とか離島は中央から見れば地の果てであり末端部なのだけれど、そういう場所を良く見ると実は海上交通によって別の土地と繋がりあっていて、決して文化のドン詰まり地形なのではないと指摘されます。

 視点を変えようというわけですね。日本列島というものを東京に中心がある一つの塊として見れば、東京以外は全部多かれ少なかれ末端です。全てのものは東京から始まり、それ以外の土地にやって来るというようなイメージ。しかし実際には日本列島はそういう単純な中心・周縁あるいはツリー状の文化モデル、交通モデルでは捉えられないもんであると。「ヤポネシア」という概念を使うことによって、そういった視点の変換が可能になるのではないか。

 そういう問題提起でした。