ところでみなさま、「アラトリステ」シリーズ翻訳で一番よく使う資料って何だと思いますか?
武器の資料? 違います。
スペイン史の概説書? 違います。
その手のものは大まかなとこは頭に入っていますし、より詳しいものは英語資料を当たることになるのですよ(日本にスペイン史研究者は少ないから、日本語資料は貧弱なんです)。
少なくとも私の所での作業で一番良く使う、これが無いとキャラの言っていることがよくわからんぜという資料はですね。あれです。人類史上最大のベストセラー本。『ダ・ヴィンチ・コード』も顔色無しの推定数千億部。そう、『聖書』。
なんせほら、この頃のスペインってキリスト教のヲタク度が高い人ほど偉いってことになってましたからね。聖なんとかのなんとか、とか、イエスのなんとかがなんとか、とか。そんな喩えが次から次へと出てきます。まあ殆どは四大福音書(マルコ、ルカ、ヨハネ、マタイ)ネタなんで、奴らきっと福音書以外はあまり真面目に読んでいなかったに違いないです。
スペイン人が福音書に詳しいのには別の理由もあるんですけどね。彼らは「聖週間(セマナ・サンタ)」と申しまして、イエスが昇天するまでの1週間に見立てて、復活祭前の一週間を毎日祝うという習慣がありますから。セビージャのセマナ・サンタなんて特に有名っすよ。
そんなわけで、私が「アラトリステ」シリーズの一段深い読み方として是非お薦めしたいのは、聖書を脇に置いて読むというやり方。特に2巻は全編これキリスト教ネタなんで、聖書のあるなしではかなり違います。大丈夫、必要な所には全部「誰の福音書の何章何節参照」って註打っておきましたんで。
とりあえず福音書だけでもお手元に。いかがでしょうか? 読み物としても結構面白いもんですよ。聖書。