キュレーション概念のポップ化とポスコロの忘却について。

難波祐子『現代美術キュレーターという仕事』(青弓社2012)読了。

今やネットのバズワード化したキュレーションという概念がアートの世界でいつ頃どのようにして生まれ、どのように発展してきたのか、我々のような美学芸術学方面の研究者ならまあ何となく分かっていたようなことを、きちんと整理してくれた良書。

考えさせられたのは、90年代に人文系のアカデミアに居た人間なら否応無しに巻き込まれた世界ポストコロニアル大戦が、アートワールドにおけるキュレーションに対して想像以上に大きな影響(あるいは爪痕)を残していたということ。

あの壮大な消耗戦を経験した人文科学者は、自分を含めてもうポスコロのことは語るのも嫌みたいな厭ポスコロ気分の中に居るんですが、おそらくはそれ故に、今30代前半以下の人たちはポスコロに対してあまりに無関心になっているようにも思える。

40歳くらいから上の人間は、語りはしないけどポスコロについては経験してしまっているので、それを踏まえた議論が自然に出来るし、それはもっと若い世代でも同じなんだと無邪気に思っていたけれど、そろそろ「教える側の人間」として、若者たちにきちんとポスコロを教える機会を作っていかないといけないのかもしれない。

尚、佐々木俊尚の言う「キュレーション」は、アートワールドにおけるキュレーションとは全然別の、もっとチャラい概念です。念のため申し添えておきます。